波乱のニュル24h独走フェルスタッペン、まさかの終盤リタイア、ネタ枠M3ツーリング躍進の要因を探る。

その他・番外編

F1は2週間の空き週、その間に伝統のニュルブルクリンク24時間耐久レースが開催。

F1からはフェルスタッペンが自らチームを率いて参戦、フェルスタッペンのドライビングによって首位独走状態でしたが、残り3時間半でドライブシャフトトラブルでまさかのリタイア。

優勝は同じメルセデスAMGGTを駆るラベノール。

こちらは予選でクラッシュしたものの、決勝で順調に順位を上げての優勝。

今回注目したのは最高クラスSP9の一つ下のクラス、SPXクラスで優勝したBMW M3 Touring 24H。

このクラス優勝の一体何が凄いことなのか?マシンの分析も踏まえて解説します。

エイプリールフールのつもりが本当に参戦

2025年4月1日、BMW M モータースポーツ車が自社のアカウントで”開発中”と称して、M3ツーリングGTレースカーの画像を投稿したところ、これが大反響。

この年の夏ごろに、来年のニュルブルクリンク24時間レースでの投入が具現化。

BMWMモータースポーツ車のエンジニアたちの手によって、僅か8ヶ月間の開発期間を経て本当に実現する運びとなってしまいました。

エンジンはM3、M4に共通して搭載されるS58B30Aをチューニングし、594psを叩き出す。

中身は完全なレーシングカーそのものです。

下記にスペックを載せます、比較対象はBMWMモータスポーツにおける主力車両の一つ、BMWM4GT3EVOです。

車両M3Touring24hBMWM4GT3EVO
全長5,218mm5,018mm
フロント全高1,273mm1,237mm
リア全高1,340mm1,308mm
ホイールベース2,917mm
エンジン型式S58B30A
最大出力594ps
車両重量1,400kg(推定)1,340kg(BoPにより1350kg)

全長は200mm長く、全高はフロントが36mm、リアが32mm高い。

ホイールベースは2,917mmと同じ。

これは3月にニュルを走ったM3Touring24hです。

他のマシンに比べて明らか大きいですよね。

見ての通りワゴンタイプの車をベースにしている訳ですから、当然クーペスタイルのM4GT3EVOよりも全体的に大きく、前面投影面積も広いです。

空力的に見ても明らか不利、しかもワゴン車なのでリアの剛性確保の必要がある分車重も重くなります。

調べたところM4GT3EVOの車両重量1,340kg、今回はBoPにより1350kg。

M3Touring24hは推定ではあるものの、1,400kgとされている。

パフォーマンスに制限が掛かっていたとはいえ、見たところの数字ではM3TouringがM4GT3に明らか劣っている。

では何故、決勝レースであれだけのパフォーマンスが発揮できたのか?

BMWが拘り続けてきた重量配分。

まず私がこの結果に対して気になったのは、マシンの重量配分。

市販車分析(メーカー別) BMW編-無頓着な空力設計と絶妙な重量バランスで駆け抜ける歓びを実現 – アルボンノート

以前私はこちらの記事にBMWとはどんな車なのか?という投稿をしている。

その際には重量物の配置の工夫などにより徹底的に拘り抜かれた重量配分が持ち味だと書いています。

理想的な50:50の重量配分の実現のために、重量物をできる限り車体中心に置く”マスの法則”を採用している。

以下にベース車両の前後重量配分を記載します。

モデルは旧M4、現行M4、現行M3、M3ツーリングの4車種です。

ベースモデルとGT3では基本的な重量配分は変わってくるので参考程度に。

車両BMWM4(F82)BMWM4(G82)BMWM3(G80)BMWM3Touring(G81)
車重1,640kg(DCT)1,730kg(AT)1,740kg(AT)1,870kg
前後重量配分(比率)50:5052:4853:4751:49
前後重量配分(kg)820kg:820kg899.6kg:830.4kg922.2kg:817.8kg953.7kg:916.3kg

旧型である初代M4はBMWが理想とする50:50の重量配分を見事に実現。

現行のM4は重量配分が若干フロント寄りに、グランドツアラー色が強くなった。

フロントが重くなれば直進は安定するが、加速時のトラクションが悪くなるため蹴りだしが鈍い。

そしてコーナリングの立ち上がり時にアクセルを開けるとアンダーステアが顕著に出る。(但しFF程ではない)

重量配分がフロント寄りの車種はアウディやアストンが該当する。

現行M3セダンは更にフロント寄り、上記の4車種の中では最もフロントに車重が寄っている。

そして今回の本題M3ツーリングは51:49でなんと現行のM3とM4よりも良い数値が出ている。

このような結果になった理由としては上記の通り、ワゴンタイプの車両なのでリアの剛性を強化する必要があり、それによってリア側の車重が重くなっている。

これが功を奏してか、車重は増えたものの重量配分が改善。

50:50の重量配分の実現は車の挙動が緩やかになりバランスの良いものになる。

フロントヘビーな車種は前述通り、フェラーリやポルシェのようなリアヘビーな車はトラクションの掛かりは良いものの、コーナリング時にブレーキングによる荷重移動をしっかりしないと、フロントの入りが悪くなり曲がってくれない。

しかしマスの法則により、重量物が車体の中心部に寄ることで居住性を損なう。

BMWはそれを補うためにホイールベースが長い。

ホイールベースの長短によるメリットデメリットは

ロングホイールベース

メリット

  • フロア面積が広くなり、フロアダウンフォースを効かせやすい。
  • 荷重移動による影響を受けにくい

デメリット

  • 小回りが利かない。

ショートホイールベース

メリット

  • 小回りがよく効く
  • 荷重移動を活かした走り(加速・コーナリング時)

デメリット

  • 荷重移動により挙動が乱れやすい。
  • フロア面積減少によるフロアダウンフォース減少。

BMWは比較的ロングホイールベース寄りの車種ですが、50:50の重量配分の実現によって欠点である小回りの悪さを打ち消そうとしている。

BMWユーザーの私からすると、BMWはメカニカルグリップが強い車種だと感じられる。

空力にあまり拘りを持とうとしないメーカーですが、ダウンフォースによる重量配分の変化を嫌っているのではないかと考えている。

以下はBMWのGT3カーの前後重量配分である

車両M3 Touring 24hM4 GT3 EVO
車重1400kg1350kg(BoP適用)
前後重量配分(比率)51:4952:48
前後重量配分(kg)714kg:686kg702kg:648kg

次にその他のGT3カーの比率である

車種AMG GT3 EVOAUDI R8 LMS GT3 PORSCHE 911 GT3 RFERRARI 296 GT3 EVOLAMBORGHINI HURACAN GT3 EVO2
車重1,335kg(BoP軽量化)1,300kg(BoP)1,300kg(BoP)1,320kg(BoP)1,315kg(BoP)
前後重量配分(比率)47:5342:5837:6350:5042:58
前後重量配分(kg)627.45kg:707.55kg546kg:754kg481kg:819kg660kg:660kg552.3kg:762.7kg

こうしてみた時にBMWは重量配分に拘っているメーカーだけあって、50:50に近い。

アウディR8とランボルギーニウラカンはプラットフォーム供給をする姉妹車なので、同じような重量配分に。

ポルシェに至っては市販車ベースよりも更にリア寄りに。

トラクションの掛かりは良いでしょうが、コーナリングでは荷重移動を市販車以上に気を遣わなければならない。

後輪に車重が偏っていることで、ストレート走行時のタイヤには想像以上の負荷が掛かっていることが容易に想像できる。

フェラーリ296のベース車両の重量配分は40.5:59.5。

これをフェラーリはGT3仕様で50:50の理想的な重量配分になるよう改造。

前世代の488GT3ではV8エンジンでしたが、V6エンジンになったことで後輪の荷重が少なくなってくれたことも要因でしょう。

ではそれがニュル24時間耐久にどう活かされたのかを考えてみる。

ニュル24時間の結果から見るM3Touring24hの評価。

今年のM3Touringはクラス優勝をしたということですが、実際どのくらいのパフォーマンスを発揮したのかを評価したいと思います。

先ず評価できる点は総合5位とクラス優勝。

たったの8ヶ月で開発したとは思えないパフォーマンス。

トップカテゴリーの車両にもしっかりと付いていけていましたし、何より総合優勝したAMGGTと同一周回(156周)でチェッカーを受けたというのが何より凄いです。

次に最速タイムの比較。

M3Touring24h 最速ラップ8:13.580

M4GT3EVO 最速ラップ8:14.452

M4GT3EVOはBoPによる縛りを受けてしまったというのもありますが、M3ツーリングに対して1秒近くも遅れている。

今回はBoPにより、AMGとウラカンが恩恵を受ける形となった。

ストレート走行時の伸びが良く、他のマシンよりも重たいM4GT3では追いついていけなかった。

しかしどういう訳かM3Touring24hは負けじと付いていけていた。

ドラッグも大きいはずなのに何故なのだろうか?

コーナリングでもトップカテゴリーのマシンに対してしっかりと付いていけていた。

空力で曲がるという感覚よりかは、シャシーのメカニカルグリップを活かしたコーナリングが何より印象的です。

重いですが重量配分に偏りが無い分、タイヤにも均等に負荷が掛かる。

その為、ドライバーにとっては計算のしやすいマシンだったのではないでしょうか?

終盤には表彰台争いに加わっていたことも評価に値する点です。

車重とドラッグ、開発期間の短さという大きなハンデを背負いながら、この結果は大健闘と言っても良いでしょう。

結論、BMWは流石ニュルブルクリンク24時間レース最多優勝メーカーといったところでしょうか?

速い車には速い理由があったということが改めて分かったのではないかと思います。

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