フェラーリのエキゾーストウイング模倣を探る、他チームが真似して効果はあるのか?

マシンアップデート分析

マイアミGPでは多くのチームが大規模アップデートを敢行。

マシンの隅々までアップデートを敢行したチーム、軽量化を中心としたチーム、アクティブエアロに着手したチームと多種多様でした。

その中でもフェラーリがいち早く採用していた”エキゾーストウイング”を真似るチームが目立ちました。

シャシー開発で他チームを先行しているフェラーリ、このエキゾーストウイングはトレンドとなりそう。

しかし、フェラーリ同様の効果は得られるのか?

エキゾーストウイングの効果

先ず、フェラーリが採用しているエキゾーストウイングにはどのような効果が期待できるか?

フェラーリはバーレーンテストの段階でいち早くエキゾーストウイングを導入。

排気ガスを活用し、排気管の直前または直後に配置されている。

エキゾーストパイプ出口を小さなウイングで塞ぎこむような形で、そこに向かって排気を吹き付けるデザイン。

排気プルーム(熱を含むガス流)をウィング又はフラップに吹き付けることで、ダウンフォースの生成やディフューザーの拡張部への影響を強めることを目的としています。

つまり、排気熱(運動エネルギーが相対的に小さい排気流)をウィングに積極的に吹き付けリアを流れる気流の失速、結果としてディフューザーとの流速差を付け、ディフューザー効率を向上させる意図が強く見られる。

これは2026年レギュレーションの許容範囲(例: リアアクスルラインからの最大60mmオーバーハング)内で実現されており、他のチームがコピーしにくい構造変更を伴う

このエキゾーストウイングを簡単に真似できない理由としては、上記の通り。

詳細としては、ギアボックス(特にディファレンシャル)の位置を最大限後方に配置した独自のパッケージングにある。

2026年レギュレーションでは、リアアクスルラインから最大60mmのオーバーハングしか許容されませんが、フェラーリはこの制約内で排気管直前のスペースを確保するため、ディファレンシャルを後方へ移動させ、変形構造下の領域を活用。

これにより、排気ガスを活用したウイングが設置可能となり、ディフューザー効率の向上を実現。

他チームがこれを追従するにはリア全体の再設計(内部メカニズムやギアボックスのレイアウト変更)が必要で、時間とリソースを要するため容易ではありません。

鈴鹿の後が2戦連続の中止となり1ヶ月の空白期間がありましたが、だからと言って1ヶ月でフェラーリ同様の機構を作り上げるのは無理があります。

そのため、フェラーリのシャシーは最も競争力があり開幕当初で、0.15-0.25秒程度のタイム向上効果が推定されていました。

では次に本題の他チームが真似てきたエキゾーストウイングを見ていきましょう。

他チームのエキゾーストウイング機構

では次に他チームが採用しているエキゾーストウイングです。

次にこの機構を登場させてきたのはハース。

排気出口のウイングが小さく、塞いでいる面積も少ない。

フェラーリはリアの失速を大きくするデザインでしたが、ハースはマイルドデザイン。

発生するダウンフォースは当然フェラーリに比べて少ないわけですが、マイルドデザインの採用はリアの安定感向上を主にしているように見える。

フェラーリのようにリアダウンフォースを大きく増やす手法は、一見利点が多いように見える。

しかしバランスを崩すと、重量配分がリア寄りになることで、コーナリング時にフロントの応答性が悪くなるといったデメリットも十分に考えられる。

ハースはこれを嫌ってか、マイルドデザインによってリアのダウンフォースはある程度確保しつつも、全体的なバランスを崩さないことを主眼に置いている。

ハースはギアボックス、足回りをフェラーリから供給しているので必然的に構造面で近くなり、こういった機構を採用しても得られる効果は大きい。

そして今回マイアミで採用してきたチームのエキゾーストウイング構造は以下の6チームである。

エキゾーストパイプ出口をウイングで塞ぐ形。

レッドブル・マクラーレン・キャデラック。

ウイングというよりかは排気出口を部分的に塞いだという形に近い。

前述の通りギアボックスの位置の関係上、このような構造を取らざるを得なかったか?

ハースと同じフェラーリPUを積むキャデラックはフェラーリPU系のチームとは違ったアプローチ。

キャデラックは将来的に自社PUを使用する。

その準備段階としてハースとは違った独自路線を選択。

そのため、フェラーリPU勢とは構造が違うので、同じような機構を取り入れることはしていない。

ミニウイング型。

メルセデス・アルピーヌ・ウィリアムズ。

こちらの3チームは前述3チームとは違い、エキゾーストパイプ出口に小さなウイングを設けている。

ウィリアムズに至っては、縦長のミニウイング。

端にフィンが付いており、排気をそこに集めてより失速を大きくさせたい狙いか?

基本的には上記の3チームと意図は同じ。ただ排気をどのタイミングで受け止めるかの違いである。

そしてこの機構を採用している3チームの面白い共通点として、3チームともメルセデスPUであるということ。

アルピーヌとウィリアムズはギアボックスもサスペンションもメルセデスから供給を受けている。

マクラーレンはPUのみメルセデスから供給を受けているが、サスペンションやギアボックスは自社製造の為、違う機構になったと考えて良い。

フェラーリもマイアミでエキゾーストウイングをアップデート。

ウイングが横長になり、ディフューザー効果を側面からサポートする形に。

それも相まってディフューザーのセンターボードにも変更が加えられていた。

フィンを短く外に向かって折り曲げる形状を採用し、引き抜き効果向上を狙った。

特に低速コーナー中心のマイアミでは、低い速度域からマシンのエアロを機能させる必要がある。

そして低速コーナー脱出後はロングストレートとなるので、トラクションの確保。

鈴鹿で露呈したリア周りの不安定さ。

リアの足回りの粘り強さをこのアップデートで得ようとしていたのではないか?

効果はあるのか?

前項を見てもらって分かるように、各チームエキゾーストウイングを採用するもフェラーリとは程遠い造りをしている。

では、果たしてそれでフェラーリと同等の効果は得られるのか?

結論から入ると、他チームがフェラーリのエキゾーストウイングを形だけ模倣しても、フェラーリと同等の効果を得るのは極めて難しいというのが技術的な定説です。

F1のエアロダイナミクスにおいて”見た目を真似る”ことと”機能させる”ことの間には、非常に高い壁がある。その理由は主に3つ。


1. 「上流」からの気流の質が違う

エキゾーストウイングは、マシンの最後端に位置するデバイス。ここに当たる気流は、フロントウイング、サスペンション、サイドポッド、そしてエンジンカバーを通り抜けてきた「残りカス」のような気流です。

  • フェラーリの場合: 車体全体が、このエキゾーストウイングに「最高の状態の空気」を送り込むように設計されている。
  • 他チームの場合: 自チームのマシン特性に合わせた空気を、無理やりフェラーリの様なエキゾーストウイングを当てている状態。上流の気流が乱れていれば、どれだけ優れた形状のウイングでも本来の性能を発揮できない。

再三言うようであるが、フェラーリのエキゾーストウイングは、フェラーリのサスペンション、ギアボックス構造と位置関係によって実現されている。

2. 排気ガスとの熱関係

このデバイスの肝は、排気ガスの”熱”と”流速”を利用して、リアウイング下面の気流を吸い出す(引き抜く)ことにある。

エキゾーストパイプから流れ出る排気は高温の為、運動エネルギーが低く流速が遅い。

いわゆるシャシー上部で高圧状態を作り出す。

そこにエキゾーストウイングで更に流速を遅くし、ディフューザーから抜けて来る高速の気流との圧力差を増大し、より強力なダウンフォースを得ることを狙っている。

  • PU(パワーユニット)の特性: 2026年規定のPUはエネルギーマネジメントが複雑で、排気ガスの温度や勢いはメーカーごとに異なります。フェラーリのウイングは、フェラーリ製PUの排気特性に完璧にチューニングされています。
  • マッチングの問題: メルセデスやホンダPUを積むチームが形状だけを真似しても、排気ガスとの相性が悪ければ、期待した”吸い出し効果”は得られない。

3. アクティブ・エアロとソフトウェアとの高度な同期

2026年規定ではリアウイングが可動式(アクティブ・エアロ)だが、フェラーリはこのエキゾーストウイングとメインフラップの動きを、独自のアルゴリズムでミリ秒単位で同期させていると言われている。

  • 制御の壁: 外観コピーできても、それを動かす”制御ソフトウェア”や”エンジンマッピング”まではコピーできません。ソフト面での最適化がなければ、単にドラッグを増やすだけの「お荷物」になるリスクすらある。

期待できる効果の現実

模倣したチームが得られる効果は、良くて「フェラーリの60〜70%程度」というのがパドックの一般的な見方である。

  • 成功するケース: マシンの基本コンセプトがフェラーリに近いチーム(ハースなど)であれば、比較的高い相乗効果が期待できる。
  • 失敗するケース: レッドブルのような「ハイ・レーキ(前傾姿勢)」や、独自のサイドポッド形状を持つチームが部分的に取り入れた場合、逆にリアのバランスを崩す要因になりかねません。

なので、フェラーリからパーツ供給を受けているハースは、この機構を取り入れれば必然的に速くなるということである。

キャデラックの将来的な独自開発という意図は分からなくもないが、参戦初年度で冒険しすぎたのではないか?

無難にフェラーリからサスペンションとギアボックスを共有していたら、また別の結果になっていたかもしれない。(結果論ではある)

結論

フェラーリのエキゾーストウイングは、「車体・エンジン・ソフト」の三位一体で初めて機能するシステム。形を真似るのは第一歩に過ぎず、フェラーリほどの効果を手に入れるには、マシンの根本的な再設計(特にリア周り)が必要になるでしょう。

サスペンションにギアボックスの位置を変えるとなると簡単には済みません。

マシン構造の根本を変えることを意味していますので。

各チームが”とりあえず付けてみた”のか、それとも”自車コンセプトに落とし込めた”のか、今後のレースで見極めていく必要がありそうです。

マシン分析 – アルボンノート

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