市販車から見る空力学東京オートサロンで見てきた市販車を元に解説していきます。

メカニズム(空力学・自動車構造)

前回の投稿初のオートサロンについての感想とRB19のショーカーについての分析をさせて頂きました。

改めて初のオートサロンを振り返ってみると、とにかくもの凄い人だかりでした。

以前知り合ったF1ファンの方から話を聞かせて頂きましたが、昨年は制限があったとはいえ、今年はすごい人の数だ。とリピーターの方が驚くほどだったそうです。

初めてのオートサロンと未知の領域だったので、まずは一日かけて一周しようと考えていたのですが、人の多さというのもありかなりの時間を要しました。

昼食を取ろうにも売店やフードコートは常に満席だったので、昼食は諦めて展示を見て回ることに集中しました。(笑)

車の展示だけでなくイベントも豊富だったので、どれを見て回ろうかというのも事前に考える必要があり、とりあえず見て回ろうという考えでは大変だということが身をもって分かりました。

突然ですが、”モータースポーツは走る実験室”という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

自分もその通りだと思い、サーキットでの全開走行を通して安心して市販車を使えるという信頼性、空力効率であったりと

全開走行を通して磨かれる技術や生まれる技術があると思います。

今回はモータースポーツ由来の空力学を見ていきましょう。

フロントのダクト(Sダクト)の効果

私自身、一通りブースを回ってみての感想は、スポーツカーのフロントボンネットに穴(ダクト)を設けている車が多いと感じました。

そもそもSダクトというのは、ダクトを伝って流れる空気がSの字を描くようにして流れる事からその名が付きました。

例えばこのフェラーリF8(スパイダー)の場合

フロント下面からボンネットに抜けていく中で流体の速度が高まり、車体前面の空気をフロントボディに引き込み沿うようにして空気を流そう

という狙いがあって設けられているものです。

以前のF1マシンのレギュレーションでは、ルノーの様にフロントノーズにFダクトを設けているチームが存在していました。

画像はルノーではなく、トロ・ロッソSTR14ですが、ノーズの中間あたりにダクト状の穴が開いているのが分かりますでしょうか?

この穴がSダクト機構であり、ノーズ下を通る空気の一部をSダクトに通しノーズ上面の空気の剥離を防ぎ、安定したダウンフォースの獲得に貢献しています。

なぜかつてのF1マシンにFダクトがつけられていたのかというと

先ほども説明しましたが、空気の流れが車体の上部に沿うようにして流れるのが理想とされています。

しかしF1の場合フロントノーズに傾斜が付いていると、流速の速い空気が当たった場合に、空気が傾斜部分で剥離を起こしてしまいダウンフォースを得られないという事例がありました。

現在のマシンはグランドエフェクトカーであり、フロントノーズ上にダクトを付けてしまうと今度はフロアに流す空気量が不足してしまい、それはそれでダウンフォース量低下の原因になるのでつけるという選択はできなさそうです。

重要ではなさそうで重要な”カナード”

F1マシンの場合フロントウイングの翼端板に付いている

カナード

と呼ばれる空力パーツ

市販車の場合はフロントバンパーの横(矢印)につけられます。

複雑な空力学を有するF1ならともかく、市販車に効果なんてあるの?

と疑問に思われた方もいらっしゃるでしょう。

簡単に説明すると

圧力の高い車体前部から気流を側面及び上部にへ押しやり、車体側面に計算された縦渦を発生させるものです。

ボディ横の気流の乱れや剥離を抑え直進安定性を増加させる効果があります。

更にカナードから発生する縦渦の内部が遠心力により負圧になっており、ホイールハウス内の空気が吸い出されることで圧力が下がりダウンフォースを発生させています。

F1とは違いフロントも側面も面積が広い市販車にとっては効き目が大きそうな空力パーツですね。

ただし、カナードを装着する際には大きさに注意が必要です。

公道で走らせる際には、人を傷つけたりしないよう、5R以上の丸みを付けたり、縁に5R以上のゴムモールを巻くなどする必要があります。

更に大きすぎるものは車検が通らないので、取り付けの際にはよく検討した方が良さそうです。

ただし、乗用車であっても2cm程度の突起で高速域での直進安定性向上の効果は十分に発揮されるそうです。

ディフューザーを付けると…

空力パーツの中でも、フロントスポイラー、リアウイング等は見た感じで何となく空力効果がありそうと分かるかもしれませんが、リアエンドに向けて空気を跳ね上げられるように取り付けられている

ディフューザーの効果はいまいち分かりづらいかもしれません。

そもそも”ディフューザー”の意味は「拡散、散布するもの」という意味になります

ディフューザーは以前の投稿で紹介したベンチュリ効果を応用したものなります。

フロアの入口は空気を沢山取り入れたいので、開口部(トンネル)の面積は広めに

一番負圧を強めたい部分は面積を狭めて(どこで負圧を発生させたいかによって位置は変わってくる)

そしてフロア中央部を通ってきた空気をディフューザーを使って加速させて蹴り上げるように空気を抜く。

・・・といっても一般車はレースカーと違って、フロアはフラットに作られているので

F1のようなグランドエフェクトを実現させるのは不可能なんですけどね。(笑)

ディフューザーを付けることでその市販車のダウンフォース量は、

なんと68倍までに膨れ上がります。

市販車の場合はF1マシンなどとは違って、最低地上高が90mm以上という規定があるのであまり影響がないのでは、とも思いましたがどうやら関係は無いみたいです。

しかもディフューザによって発生したダウンフォースの良いところは

空気抵抗をあまり生み出さないことです。

市販車の場合はモータースポーツと違い、全開走行をする機会がよほどのことが無い限り無いと思います。

そうすると目を向けられてしまうのは、燃費などの経済的な要素だと思います。

ですがディフューザーが付いていれば、空気抵抗や燃費を気にすること無くダウンフォースが増やせます。

もう一点ディフューザーにはバーチカルフィン(垂直の仕切り板)がついています。

特にリアディフューザーは横幅が広く、端と中央とでは空気が通る際にその量と吹き出す方向にバラツキが出てしまいます。

バーチカルフィンには気流を整流する働きがあり、ディフューザー全体を効率よく機能させるために設けられている訳です。

ダウンフォース量は違っても

F1マシンにはダウンフォースを発生させるために、フロントウイング等の市販車には絶対についていないパーツはあるかもしれませんが

ダウンフォースを発生させる仕組みは

F1であっても市販車であっても同じです。

ただダウンフォースの発生量であったり、付いているパーツ付いてないパーツがあるというだけのことです。

近年では、技術力の発展によって、モータースポーツ由来の技術が市販車にも多く見られるようになってきました。

何れは市販車がF1マシン並みに速く走ることができる日が来るのでしょうか?

今回のオートサロンでもカスタムカーがズラリと並んでいました。

とても格好よく空力的にも優れているカスタムも多々見受けられましたが

車検違反でパーツを外さなければならないというのは少し忍び内容にも思います。

規定に則った上で車いじりや改造、カスタムを楽しめればいいんじゃないでしょうか?

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