第3戦オーストラリアGP反省会(予選編)ドライバビリティが分けた僅差のQ3進出争い

F1 2024シーズン

波乱が多かった第3戦オーストラリアGPはサインツが盲腸の手術明けとは思えない終始完璧な走りで2位以下を圧倒しレッドブルの連勝にストップをかけました。

予選で圧倒したフェルスタッペンがこのレースも支配するのだろうと思っていましたが、3周目でまさかのブレーキから出火しリタイア。

それだけにとどまらずハミルトンがその後にエンジントラブルでマシンを止めるという、新旧チャンピオンが2台も消えてしまいました。

そういった中で角田は、2人が残っていれば入賞圏外だったところですが、粘り強いレース運びで入賞圏内でフィニッシュ。

ラッセルのファイナルラップの自滅と、アロンソがその原因を作ったということでペナルティを受け繰り上がりの7位。

持っているとはいえ、今回の波乱が多いレースでは生き残ることがなによりも大事。

仕事はしているのではないかと思います。

しかし、予選は今回も僅差でした。

Q3に進めたマシンとそうでないマシンの差は何だったのか

今回はその部分について反省をしていきたいと思います。

予選の勝負を分けたドライバビリティとは?

私は今回のQ3進出争いの勝負を分けたのは”ドライバビリティ”の差と考えています。

ドライバビリティとは何のことかと簡単に説明すると、乗りやすさを表した言葉です。

ドライバビリティが高い、はつまり乗りやすい(運転しやすい)。

直線を走るときは安定しているか?

ブレーキの効きは良いか?

小回りが利くか?

電子制御(ABS、トラクションコントロール)が入っているか?

他にもありますがドライバビリティの基準はこういった指標から評価されます。

現代におけるF1ではABSやトラクションコントロールは禁止ですが・・・

逆にドライバビリティが低いというと、その車は運転がしづらく難しい車ということです。

アクセルを少し開けただけでも車がスピンしそうになる。

ブレーキを少し踏んだだけでロックしてしまう。

こんな車が乗りやすいわけないですよね?

実をいうと我々が普段日常の移動手段として使用している自動車は基本全てアンダー気味にセッティングされているのです。

しかし、モータースポーツの世界で、特にF1において曲がらない車というのは致命傷ですよね?

ですが考えてもみてください。

普段運転している時にコーナーを攻める必要はあるでしょうか?

コーナーに差し掛かるギリギリでブレーキを踏む必要があるのでしょうか?

普段一般の道路を走るときに速さは必要ないので、市販車は安全を第一に考えてセッティングされているのです。

速く走らせることを目的とせず、移動手段として考えている人たちにとって、車は安全な乗り物でなければなりません。

曲がりづらいとはいっても急角度なカーブはハンドルを何回も回せば曲がれてしまうのですから。

そこにアンダーステアなんて概念は存在するはずがありません。

もし市販車がオーバーステア気味にセッティングされていたら、一日の事故の件数はグッと跳ね上がってしまうでしょう。

今回のオーストラリアGP、アルバートパークサーキットの場合は、下記で触れたように

第3戦オーストラリアGP。持ち込まれたパーツ、セッティングの確認と展望 – アルボンノート (albonnote.com)

最初のうちは路面が汚く、滑りやすい。

F1マシンは本来、綺麗な路面で最高の条件で速く走ることを前提に作られたマシン。

なので市街地コースやアルバートパークのような半公道かつ、F1が走る時しか使われていないようなコースというのは、マシンにとって最悪なコンディションです。

特にFP1.2では多くのマシンがコースアウトしていましたが、特に酷かったのは、マクラーレンを除いたメルセデス勢でした。

FP3では流石に持ち直してはいましたが、一発勝負の予選では肝心なところでミスが出ていました。

Q3争いをしていたのは、メルセデス、アストンマーティン、RBの三台でした。

この三台を中心にピックアップしてみましょう。

アンダー気味のマシンが功を奏したRB

RBのマシンといえばフロントウイングが高く、フロントダウンフォースが弱いために曲がってくれない、いわゆる”アンダー気味”のマシンです。

今回もリアウイングは薄くして、ダウンフォースを削ったセッティングを持ち込んできました。

アンダーステアは基本曲がってくれないので、コーナーではいつも以上に早めの減速をしなければならない。

それだけでなくステアリングも余計に切らなくてはいけないのでタイヤにストレスを掛けて早く潰してしまう。

これだけの字面を並べればアンダーステアは良いことなんてないと思いませんか?

実はそれは間違いでアンダーステアは悪いことばかりではありません。

アンダーステアの利点は実はこのイニシャルDの2,3巻で触れてくれています。

このシーンを解説すると・・・

アンダーステアは曲がりづらいですが、その反面安定感(特に直進安定性)に優れているということです。

直進安定性が優れているということは、オーバーセッティングのマシンに比べて、早くアクセルを開けることができるということ(アクセル全開に出来る時間が長い)。

つまりコーナーさえクリアしてしまえば、立ち上がりが早いということです。

それだけではなくオーバー気味のマシンに比べて安定感があるということはドライバビリティが高いマシンだということです。

ドライバビリティが高いマシンなので、ドライバビリティの低いピーキーなマシンに比べて性能の限界が引き出しやすいということです。

このシーンの場合対象がハチロクという市販車ベースの車かつ、FRなのでF1とは関係ないのではと思いますが、

F1の場合ミッドシップエンジンなので、フロントエンジンに比べて駆動輪に荷重が掛かりやすいので、F1の場合の方がもっと踏めるということになります。

最もこのシーンで言っているように腕があることが前提ですが・・・

引用元https://twitter.com/f1_tempo_/status

これはQ1での角田とリカルドのラップタイムを比較したものです。

これを見てみるとリカルドはブレーキングポイントを奥まで遅らせる突っ込み重視。

逆に角田は、ブレーキのタイミングが若干早い分、アクセルの開きが早い立ち上がり重視。

リカルドの方が早くコーナーに差し掛かっていますが、結局その分速度を落とさなければならず、角田よりもコーナリングでもたついた形になってしまっています。

角田の場合、アンダー気味のマシンの特性を上手く生かしおり、立ち上がりがリカルドに比べて早いです。

角田はドライバビリティの高いこのマシンで限界を上手く引き出している。

RBのマシンは速くないが基本的に乗りやすいのでミスを犯すリスクが少ない。

その結果がQ3進出を呼び込んだのでしょう。

逆にリカルドはアンダー特性を生かした走りができていないのでマシンの限界が引き出せていない・・

突っ込み重視のドライビングの結果、ターン5でトラックリミットを取られタイム抹消。

Q1敗退に繋がっています。

ドライバビリティの低いアストン、メルセデス

次にアストンとメルセデスの分析に入ります。

この2チームはフリー走行でのコースアウトや横滑りが特に酷かったです。

この2台の共通の弱点はリアの不安定さ(スタビリティ不足)。

この2チームのマシンはPUはおろか、ギアボックスとリアサスペンションまで同じものを使っている。

多少細かい構造の違いはあれどここまで内部構造が一緒であれば同じような欠点を抱えていても何ら不思議とは思いません。

欠点は何度も触れているので割愛します。

肝心のQ2ではハミルトンが最終コーナー手前でミスを犯しています。

このミスさえなければハミルトンはQ3に行けてたのではないのでしょうか?

Q3に入るとアストンの2台がミスを犯す。

先ずストロールがターン9で滑ってしまい大幅なタイムロス。

続いてアロンソがターン1でオーバーランをしてしまいアタックを取りやめてしまった。

その後一回アタックをかけていましたが、最後の最後でウェービングをしていた!?

ここまでミスが続いたとなるとやはり原因としてドライバビリティの低さが挙げられます。

運転しやすさを捨てて速さに充てているので乗りこなせれば速いのですが、こういった予選などの一発勝負ではミスを犯すリスクがどうしても高くなってしまう・・・

今回は残念な結果に終わってしまった2チームですがマシンのポテンシャルの高さは十分に感じられます。

この先のアップデートでどうマシンが熟成していくかが楽しみではあります。

F1マシンの大前提

今回は結果的にドライバビリティの高さを生かしてマシンの限界を引き出した角田に軍配が上がった形になりました。

しかしRBのマシン作りはモータースポーツのチームとして根本的に間違っているように感じます。

そもそもF1というのはモータスポーツの頂点であり、世界一速い車を作らなければいけない。

結論を言ってしまうとドライバビリティというのは必要のないものです。

運転しやすいということは、まだ車を速くできる余地があるということ。

モータースポーツの世界で本当に必要なのは速さ。

つまり”ドライバビリティ”というマージンを削ってそれを速さに充てるということがモータースポーツの本来の姿ではないでしょうか?

最も、2021年から設けられた予算制限がマシン作りを邪魔しているように思えます。

クラッシュによる修理も予算制限に設けられている。

乗りづらい車を作ってドライバーたちに頻繁にクラッシュされてはチームとしてもたまったものではない。

そんなジレンマが今のF1にはあるように思えます。

確かにチーム間の差は思惑通り縮まってきてはいる。

でもそれがF1の本来の姿なのでしょうか・・・

そしてもう一つの疑問は角田が速いけどドライバビリティの低いマシンに乗った時に同じようなパフォーマンスができるか?ということです。

先述のようにトップ5と目されているチームは、速い分ピーキーでドライバビリティが低いので乗りこなすのが難しいと考えています。

そしてこれまでも見てきたように、下位チームで速さを見せていたドライバーがトップチームのシートに座った途端、速さを見せられなくなったという例も多くあります。

果たして角田はどちらなのか・・・

コメント

タイトルとURLをコピーしました