スペインでフロントウイングが規制された。
それによってフロア下に流せる気流は少なくなってしまう。
そうなってくるとフロア構造が大事になってくる。
マシンの理解において一番重要なのは、先ずはマシンを点(部分的に)で考えて、最終的に点と点を合わせて線で考えること。
フロントウイングと併せてフロア構造も見ていきましょう。
規制されたフロントウイング

マクラーレンはスペインで何故フレキシブル規制の影響を受けなかったのか?

イモラで規制対策用のフロントウイングを試したのは勿論ですが
マクラーレンのフロントウイングはそもそも大きく(フラップの前後幅がある)、フレキシブルばかりに頼らないダウンフォース発生方法を選択している。

フロアに取り込める空気量が制限されるのであれば、物理的にマシン上部と下部(フロアの)圧力差を物理的に作ってしまえばいい。
どこか前レギュレーションのフラットボトム規定時代の原点に戻ったような考え方に思えます。
フレキシブル規制で影響を受けるチームの典型的な例として。
- そもそもフレキシブル機構でのダウンフォース発生(グランドエフェクト)に頼りすぎ。
- 車高変化に対して対応できない。
この二つが挙げられるでしょう。

車高変化に対応できていないマシンの典型的な例としてレッドブルのRB21を上げます。
しかしレッドブルの作るマシンはレギュレーション発足当初は、車高変化に対してかなり柔軟だったマシンです。
F1パフォーマンス分析、5戦終了、トップ4のマシンのポテンシャルを探る。 – アルボンノート
こちらでも紹介したのですが、ニューウェイの意向を無視し開発を続けた結果、丸みを帯びあらゆる姿勢に対応できていたマシンが、いつからか所々角ばったデザインになり、車高変化に対応するのが難しいマシンになってしまった。
アップデートを通して改善(戻す)すればレッドブルにも勝算があるはずなのですが、ニューウェイが抜けた穴というのはあまりにもでかすぎた。
角田のフィードバックも優秀であることは間違いないでしょうが、ニューウェイがデザインしたマシンほどの速さを手に入れるのは難しいでしょう。
フェラーリ、フロアアップデートも迷走続く
フェラーリのハミルトンはモナコのFP3でクラッシュ。
これによってフェラーリのフロアが公開された。
2024シーズン後半を境に、クラッシュやカメラマンによるスクープ写真が極端に少なくなり、フロアの全貌が中々明らかに出来ない状況です。

フェラーリSF25にはフロアのキックポイント(床面積が変化する場所)なるものが3カ所存在する(白矢印)。
- フロアトンネル入り口付近
- フロアエッジを通過した直後
- リアディフューザーが始まる手前
この写真を見る限りでは2のフロアエッジ付近のキックポイントが路面に対して一番近いように見えます。
フェラーリのフロアは2022年のシングルベンチュリを進化させたような形です。
最大負圧の発生ポイントをマシンの中心寄りに設置した考え方です。

レッドブルRB18がトレンドにしたダブルベンチュリ(キックポイントが2カ所)を取り入れつつも現行レギュレーションで熟成させ続けてきたシングルベンチュリを合わせたのでしょう。
シングルベンチュリの利点は
負圧を一点集中させることでより強力な負圧を発生させることができる。
ダブルベンチュリの様に前方のキックポイントで空気を大量に使い過ぎてしまい、後方のキックポイントで空気が不足しグランドエフェクトが弱まるリスクが無い。
しかし欠点として、中央でグランドエフェクトを起こすので、マシン前後のグランドエフェクトのバランスは取りにくい。
その代償としてSF25が抱えている問題の代表例、高速域でのボトミングがある。
強力な負圧はグランドエフェクトも強力にする分、車高が思った以上に縮んでしまう。
限界まで低くなった車高はやがてフロアの底打ち(ボトミング)を起こす。
ボトミングを起こしながらの高速域の走行はコーナリング性能も低下し危険である(スキッドブロックの過度な摩耗のリスクもある)。
なので、予防として車高を高くすると想定していたダウンフォースが得られなくなる。
ラップ全体のタイムで伸び悩む、という悪循環に陥っている。
リアディフューザーのキックポイントは車高調整で対応できるようにできる限りマシンの後ろに持っていくのが最適です。
結局のところ、グランドエフェクトによるダウンフォースの発生は、ダブルベンチュリの方が適している。
前方のキックポイントで多く気流を使うのであれば、キックポイント直後のトンネル面積を広く取って、後方のキックポイントで使う気流の量を確保すれば良いだけのことですから。
2025年シーズンは来年から新レギュレーションの為、リソースを来シーズンのマシンに集中的に投資するチームがほとんど。
なので、アップデートと言えるものの多くが、サーキットスペックに合わせたものになるでしょう。
大規模アップデートを入れてくる可能性のあるチームは、チャンピオンになる可能性があるトップチームくらいだと思います。
マクラーレンが独走してますが、この先も競争力を発揮する可能性はかなり高く、マクラーレンのシーズンとなっていくのではないでしょうか?
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