プレシーズンテストの反省、分析第2章です。
前回は全体的な感想と自分なりの開幕時点の戦闘力予想をしました。
今回は本格的に実際に新型マシンの分析の分析を行っていきます。
ですがその前に私から今年のマシンの挙動を見て一言だけ結論を言うと
フロントとリアダウンフォースのバランス
この言葉を踏まえた上でマシンを見ていきましょう。
ピーキーな挙動のチームはフロントウイングに原因有り
今期の新型マシンの挙動を見ていて、リアが滑ってピーキーなマシンが多く見受けられました。
リアが滑っていた多くのチームがフロントウイングのノーズとメインフラップが独立している形状という共通点がありました。
トレンドのリアウイングを取り入れているチームは以下の通りです。
- マクラーレン
- フェラーリ
- ウィリアムズ
- アルピーヌ
では何故その形状のマシンにピーキーな挙動が見受けられてしまうのか?


アルピーヌのオンボード映像です。
上の写真は高速域を走行中、下の写真は低速域を走行中。
矢印の部分を見ていただくと分かりますが、メインフラップ角度が速度域に応じて変わります。
トレンドのフロントウイングは速度が上昇するにつれてダウンフォースの力でフラップが寝ます。
これにより、ノーズ下に流す気流の量を増やし、フロントのキックポイントで発生するグランドエフェクトをより強力にします。
これによってフロントのダウンフォースは強まり、ターンインが鋭くなります。
しかし、リアのダウンフォース量はどうでしょうか?
変わっていませんよね?寧ろ減っている可能性まであります。
フロントダウンフォースは強まりましたが、フロントで使われる気流は増えてしまい、リアのフロアに流れる気流の量は減ってしまっていることを意味します。
フロントダウンフォースが強力になる分、リアのダウンフォースもより強力にしてバランスを取らないといけないのです。
かといって車高を下げるとポーパシングを引き起こす原因となり、昨年のウィリアムズの様になってしまいます。
現行における正解は、ハイダウンフォースが求められる場合、静止時の車高は高く。
そしてサスセッティングは柔らかめにし、車高変化に対して柔軟である必要があります。
この形は以前のレギュレーションで見られた、レッドブルのハイレーキコンセプトに近い形が取られています。
一方メルセデス等のようにノーズとメインフラップ接続により、トレンドを取り入れてこなかったチームは、フレキシブルによる恩恵は受けられない。

しかし速度域に応じて気流量の変化はない分、フロントとリアのダウンフォースのバランスは取りやすいです。
つまり、いい意味でフロントが鈍感であるとも言えます。
映像でマシンの挙動を確認しましたが、多少フロントの入りは劣ってもマシンの挙動には終始安定感があった。
但し、この構造で速さを求めるには限界が来てしまうので、その時にメルセデスがどうアップデートを取り入れてくるのかが今後の焦点になるだろうと思います。

レッドブルは自分たちの使っているノーズがトレンドから外れ、遅い原因だと見るや否やテスト最終日には独立型のノーズを取り入れてきました。
先端を低くすることで、ノーズ下に流す流量をコントロールする造りです。
この機構を取り入れたことでやはりピーキーにはなってしまっていましたが、速さを求める姿勢は評価したい。
マシンを速くするためには多少のドライバビリティの犠牲はつきものです。
ピーキーなチームが取るべきアプローチとは?
ここからピーキーなチームはどうすれば改善が見込めるかを分析していきます。
先ほども書きましたが、ピーキーな挙動になる原因はフロントとリアとのダウンフォースのバランスが取れていないこと。
マシンの形状が似ているとはいえ、細かい部分の構造は各チームで違っています。
それでは早速考えていきたいと思います。

フェラーリの場合、私が改善すべき場所はずばりフロアエッジです。

フェラーリのフロアエッジはトレンドを追従している大抵のチームの形と違い、切り欠きの枚数が少なくと幅が全体的に狭い。
これはフロアエッジから排出する気流を少なくし、グランドエフェクトを強くしたいという考え方によるもの。
しかし、レギュレーション発足当初はフロアエッジから気流を抜くという概念が当時は無く、それが原因でポーパシング起こしていました。
フェラーリはフロントの強さは勿論ですが、グランドエフェクトによるリアダウンフォースが強くなりすぎてしまっているパターンだと思います。
そして大抵のチームはフロア形状とリアディフューザーの形状を見直すべきと考えます。
この場合はフェラーリと逆でリアのダウンフォースが強まるようなアプローチを取ってやればいい。
フロアエッジからの排出量が多すぎるとも考えられるので、フェラーリとは逆にエッジの切り欠き減少と幅を狭めるというアプローチを取ってもいいかと思います。
フロントで空気の量を大量に使うようになった分、トンネル内部の面積を広げることで、リアのキックポイントに向けて流す気流の流量を確保するという手法も取るべきと考えます。
当然ディフューザー形状との兼ね合いもありますしマシン全体のバランスも考えなくてはいけません。
ディフューザーの解説は次回以降したいと思います。

特にマクラーレンは速いですがピーキーさが特に顕著です。
マクラーレンの場合はスピードレンジによって挙動ががらりと変わっている。
フレキシブルなフロントウイングを活かしてターンインはどのチームよりも強烈です。
ロングランが抜群に速いのは、スピードレンジが予選に比べて低いことによって、フロントとリアのダウンフォースの差がまだ少なく済んでいるから。
しかしスピードレンジが一気に上がる予選ではそうはいきません。
グランドエフェクトは速度が上昇するにつれて、フロアとマシン上部での圧力差が広がり、それによりダウンフォース量が増える。
こちらも先ほど説明した通り、メインフラップ独立型ノーズによって、フロントダウンフォースは強まりますが、フロントで使われる気流は増えてしまい、リアのフロアに流れる気流の量は減ってしまう。
マクラーレンは予選+レースペースでトップという分析が出ていますが、これはあくまで乗りこなせたらの話です。
ドライバビリティの低い車は運転が難しく、ミスが起きるリスクもそれだけ高いということです。
ドライバー自身がレースを通して慣れていくか、それともリアの安定化が実現できるアップデートを待つかの2択になります。
今回はフロントウイングを中心に書かせて頂きました。
トレンドデザインの投入は確かに速くなりますが、マシンバランスを考えないと運転が難しく、タイムを出したいときにミスなどにより出せないという本末転倒な結末になります。
4年間現行マシンを追ってきましたが、速く走らせるための正解はレッドブルの旧レギュレーションで採用されていたハイレーキコンセプトではないかという答えに行きつきました。
正直こういう答えになるとは自分でも思いもしなかったので驚きです。
空力はフロントから。
シーズンを通してこの部分のアップデートがマシンパフォーマンスを大きく分けていくことになるでょう。
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