バーレーンテストの振り返り第三弾に入りました。
今回のバーレーンテストは今年もレッドブルの圧勝を予感させるような内容でした。
特に高速コーナーが多いセクター2における速さは他の追随を許さない。
低車高時の安定感が飛びぬけて良い。
それに比べて他のチームは安定感が欠けていました。
全体的にリアのスタビリティが良くなかった、そんな感じに受け取れました。
特にメルセデス勢の不安定さは目に余るように感じました。
今回からはトップ5の一角
アストンマーティンとマクラーレンについて振り返っていきたいと思います。
アストンマーティンはメルセデスの被害者!?
昨年レッドブルから移籍してきたダン・ファローズによって設計されたAMR23はレッドブルのコンセプトも取り入れつつサイドポッドスライダーなど独自のコンセプトも取り入れ前半戦を中心に表彰台争いに加わりました。
今回のAMR24を見ていて私の個人的な感想としては、”メルセデスの被害者”という印象です。
アストンマーティンはメルセデスからPU、ギアボックスとサスペンションを供給していますが、それがどうして被害者なのか・・・
それをマシン構造を通して説明します。
メルセデス製の新型ギアボックスとリアサスペンションです。
アストンマーティンは昨年までプルロッドだったリアサスペンションをプッシュロッドに変更。
しかしロッド角度が浅く稼働域が狭いという面はもよくないと思います。
セッティング面でも自由度が少ない構造です。
以前はリアブレーキダクト周辺に様々な空力パーツを装着できたため、リアタイヤ内側下流に多くの気流を通したかったため、リアサスペンションをプルロッドにするチームが多かった。
2022年のレギュレーション変更でブレーキ周辺に関するレギュレーションも変えられたことでボディワーク下部に注目が集まった。
結局リアのプッシュロッドをいち早く取り入れたレッドブルがコンストラクターズ2連覇を達成する運びとなってしまいました。
ここでアストンマーティンのフロアエッジを見てみましょう。
フロアエッジから排出された気流が、アンダーカットの方に引っ張り上げられていることがフロービズを見ていただければ分かるかと思います。
フロアエッジに向かって引っ張り上げらるということはフロア前方の流れが速くなる。
つまりフロントフロアの負圧が強くなることによってグランドエフェクトによるダウンフォースは向上します。
リアウイングについてはロワフラップ前部が少し下がったでしょうか。
翼端板ベーンには切り欠きが確認できる。
昨年は翼端板に窪みを付けるスウェッジラインが一部チームで流行しましたがAMR24にはそれらしい機構は確認できませんでした。
アストンマーティンのテストを見ていた感想はストロールが良く乗りこなせていたのではないかと思います。
予選ペースはおおよそ5~6番手辺りRBと争うことになりそうです。
ですが、レースペースが非常に良いように思います。
コース特性によっては昨年と同じように表彰台争いに加われるかもしれません。
開幕から上位争いが期待できるマクラーレン
先ほどのアストンマーティンの振り返りでは”メルセデスの被害者”と表現しましたが、マクラーレンはどうなのか?
結論から言うと”被害者”ではないとは思います。
その理由として、確かにマクラーレンはメルセデスのPUこそ供給していますが、ギアボックスに関しては自社製造という形をとっています。
自社製造にすることで設計の自由度を確保できる。
そうすればサスペンションレイアウトも自分たちのマシンに合わせて作ることができる。
そこがマクラーレンとアストンマーティンの違いだと思います。
今年のマクラーレンのマシンMCL38で特徴的な部分といえば、写真の通り、サイドポッドインテークのアンダーバイトが付いていないサイドポッド形状。
正直なところ私はこの構造で大丈夫なのかと心配になりましたが、どうやら心配する必要はあまりありませんでした。
そしてもう一つが、昨年のメルセデスW14に見られた、サイドミラーステー下のウイング
これもW14同様にサイドインパクトストラクチャー内蔵のものでした。
W14と同じくアンダーカットに気流を導くためのものとして扱われるでしょう。
上の写真はマクラーレンのサスペンションアームの比較です。
今年は2023年に比べてアッパーアーム後部の取り付け位置を低くしアンチダイブ機構を強化。
それだけではなくアーム後部の取り付け位置が後方に下がった。
レッドブルのコンセプトはサスペンションに取り入れられていたようです。
フロービズを確認すると確かに、ミラーステー下のウイングは気流をアンダーカットに向けて流す作用があるようです。
ウイングの下後方、サイドポッドのアンダーカットにフロービズが流れていってます。
このフロービズを見る限りダウンウォッシュは強力でしょう。
ウイングを通じてアンダーカットに流れていった気流はフロアエッジから流れ出た気流と合流しより強力なフロアシーリングを実現するでしょう。
マクラーレンのテストを見ていて気になったのが、アクセルを開けるタイミングが微妙に遅かったこと。
特にセクター2のターン10辺りが顕著だったと感じました。
原因はリアのスタビリティ不足、攻めようとすればするほどリアが滑ってしまう。
そのため中々フルスロットルにすることができないのだと思います。
ドライバーに関してはピアストリは割と順調そうに周回を重ねていましたが、ノリスの3日間の周回が他ドライバーと比較しても少ない。
信頼性の面でも問題を抱えていたのではないでしょうか?
レッドブルの背中はまだまだ遠い
今回はメルセデスPU勢の2チームについて振り返っていきましたが、どちらにも言えることはリアのスタビリティが不足しています。
とにかくレッドブルのテスト走行は文句のつけようが無い。
それに比べると、マクラーレン・アストンマーティンの2チームはまだまだレッドブルの背中は少し遠いように感じます。
昨年のアストンマーティンはアロンソは非常に良かったがストロールが全然話にならなかった。
怪我による出遅れもあるかもしれないが、マシンを乗りこなすことができていませんでした。
しかし今回のテストでは両ドライバー共に淡々とテストを行うことができていた。
ストロールもそろそろアロンソといい勝負をしないとまずい。
マシンの本当の実力は開幕して見ないと分かりませんが今回振り返った2チームは良い立ち位置は確保できると思っています。
明日で振り返りは最後、トップ3について振り返っていきたいと思います。
過去の振り返りはこちらから
バーレーンテスト2024終了。それぞれのチームを振り返ってみる(第二弾) – アルボンノート (albonnote.com)
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