いよいよフェラーリの新車発表がやってまいりました。
私自身、ティフォシなので速いマシンを期待してしまうのは毎年のことですが、毎年のように期待を裏切られてしまいます。
最後に獲得したタイトルを遡ってみると
ドライバーズチャンピオンは2007年にキミ・ライコネンが獲得
コンストラクターズチャンピオンは2008年が最後と
かれこれ、17、18年間も遠ざかっています。
2022年のF1-75には期待していましたが、結果序盤は良かったものの無残な結果に・・・
昨年SF-23はレッドブルおいて行かれるどころか他チームにも後ろを突かれる状況。
シンガポールでサインツがレッドブル以外で唯一の勝利を挙げてくれたことがせめてもの救い。
いったい何故こんな状況になってしまったのか?
昨年マシンを分析した後に新車も見ていきましょう。
何もかもが中途半端
昨年型SF-75の正常進化と見受けられますが、至る所に相違点があります。
まず一つ目は、フロントウイングフラップ上につけられたスロットギャップセパレーター。
2022年シーズンにメルセデスが使用していたことで物議が醸されましたが、昨年になりこの機構は合法となりました。
セパレーターはアウトウォッシュを促進させる効果を発揮しました。
そして二つ目は、サイドポッドインテーク付近に設けられたSダクトです。
Sダクトの目的はアルピーヌA524でも触れているように、サイドポッド上面の気流を加速させ、更にスライダー形状に気流を確実に導く機構です。
SF-23の場合後方(長細い緑の丸)にダクトがあるので、Sダクトを通じて加速した気流をそこから排出して、窪みに沿わせるように流すという狙いがあると考えています。
インテークを通った気流は冷却気として使われ、必要なくなった空気をルーバーから排出して排熱をする。
しかしその空気は運動エネルギーが(流速)が小さいため、その場に留まろうとする。
そこにフロントから流れてきた気流と衝突することで気流が乱れてしまう。
流速の違う気流、流れの方向が違う気流同士がぶつかり合うことで、乱流が発生。
乱れた空気からダウンフォースは生み出せません。
これでは本末転倒です。
結局フェラーリは独自路線のサイドポッド形状をやめ、レッドブルのようなダウンウォッシュ型に変え、窪みを抑えるデザインになりました。。
アンダーカットは面積を広く取りたいがために、アップデートされたものはサイドインパクトストラクチャーが浮き出ています。この時、フロアエッジの捲れが漸くでき、エッジからの気流の排出を少しだけ意識し始めたのだと感じました。
フロアについては以前に触れた通り。
グランドエフェクトを増進させるベンチュリ効果について解説 – アルボンノート (albonnote.com)
こちらからご覧下さい。
フェラーリのリアサスペンション手前のフロービズはサイドラインから、ディフューザー上面に引き込まれサスペンションアーム付け根のボディにまで付着。
- サイドポッドの凹みからの流れ
- ダウンウォッシュ
- コークボトルラインによって引き込まれた流れ
3つの速度も気流の方向も違う流れが合わさってしまい、綺麗に気流が流れていません。
この年のトレンドの一つでもあった、サイドポッド後端を伸ばすデザイン。
フロアエッジから排出されたインウォッシュをディフューザー上部まで引き込み、シーリングを弱めるという狙いがあったのですが、フェラーリには取り入れられていません。
こういったことが重なり、リアのダウンフォース不足に陥り結局リアの挙動が乱れる。
フェラーリは一体何がしたかったのだろう?
姿勢変化を嫌い、低重心化をコンセプトにしていたフェラーリはインダクションポッドを小型に。
前面投影面積の減少と、F1-75から継続している側面のホーンウイングの整流によって、リアウイングの効率を向上させた。
リアウイングはウイングステーによる剛性を極限にまで削り、ウイングにかかる負荷に応じて、シングルステーと、ダブルステーを使い分けていました。
開幕バーレーンでは案の定、リアウイングが剛性不足でぐらつき急遽ダブルステーに変更ということもありました。
ビームウイングの特徴としては、ロワウイングよりもアッパーウイングの方が薄く、あくまでもリアウイングによって発生するダウンフォースに頼っています。
SF-24
昨年のオフシーズンでシミュレーターに乗ったサインツは、昨年マシンと挙動が全然違うと語っていました。
チーム側も認める通り、SF-24は95%コンセプトを新しくしたと語っています。
私も仕入れた情報では、RB19のコピーという情報を手に入れてましたがそれは正しかったのか・・。
先ずフロントウイングですが、昨年まで採用していたスロットギャップセパレーターの数が少なくなりました。
フラップは3枚がノーズに接続される形で、メインフラップは一枚目のフラップからセパレーターを介して吊り下げられた形状になり中央部だけ下に湾曲したような形になっています。
車体中心線に最も近い左右一枚ずつのセパレーターは、ノーズ端に対応するような形で配置。
こうすることで、ノーズ中心部を通る気流とそれより外を通る気流とで分ける。アウトウォッシュを作るという意識がより強くなったデザインになりました。
フロントサスペンションは昨年同様にプッシュロッドを採用していますが、アッパーアーム前部の取り付け位置がSF-23と比較してかなり高い位置に取り付けられ、後部は前部に比べると低い位置に取り付けられました。
この手法はRB18で取り入れられ今では多くのチームが模倣するトレンドデザイン。
これによりアンチダイブ性能の向上も期待でき、フロントウイングから跳ね上げられた気流をスムーズに抑えつけることが可能です。
但し、上から見た時にV字角が大きくないと、アップウォッシュを抑えきれずにダウンフォースを作ることができません。
サイドポッド周りも大きく変化。
アンダーカット形状はRB19の模倣、サイドポッド上部には、昨年まで取り入れられていたバスタブ形状はもうなく、代わりにスライダー形状が導入されていました。
サイドポッドインテークは他チームの例に漏れず、張り出しを付け、昨年見られたSダクトも引き続き採用されたようです。
バスタブではないSF-24は全体的にすっきりしたシルエット。
ハロの側面にあるダクトがSダクトの排出口と考えられます。
排出された速い空気(負圧)は大気圧(正圧)により下に押され、確実にスライダー形状に空気を流そうという狙いでしょう。
フロアエッジもRB19に倣ったような形。
インウォッシュによるフロアシーリングは間違いなく昨年より強いはずです。
サイドポッドスライダーを流れた気流はディフューザー上面に引き込まれていきます。
一つ気になるのは、フロアフェンスの形状が昨年と変わらず3枚とも平行を継続しています。
あらゆる部分はRB19を模倣してきましたが、フロアコンセプトはF1-75とSF-23のコンセプトを踏襲しているようです。
フロア形状は一体どうなっているのか少し心配です。
全体的に見てRB19のコピーという感じが強い一台ですが、フェラーリのテクニカルディレクター、袁リコ・カーディルはあくまでも独自路線のコンセプトを取ったと語っています。
今年こそ王座奪還を
見出しの通りフェラーリは常に上位にいるのが当たり前と思われているチームです。
なので目標は毎年同じようにワールドチャンピオン。
しかし近年は、メルセデスやレッドブルの台頭によって10年以上も後塵を期すシーズンが続いています。
その原因はF1ファンなら分かるであろう、戦略ミスや、ピット作業の際などの不手際
前述の通り中途半端なマシンコンセプトに最早お家芸になったチーム内での内輪揉め・・・
挙げだしたらキリがありません。
厳しい意見が多いですが、それはやはりこのチームが勝ってほしいから故
ルクレールをはじめとするドライバーの力は間違いなくチャンピオンクラスです。
今年こそは期待したい。
・・・毎年こんなこと言っていますがそれは叶うのでしょうか?
新車発表はこちらも参照
アストンマーチン2024年型マシンAMR24。手腕が問われるファローズの二年目 – アルボンノート (albonnote.com)
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