今回は前回の続きとして、オートサロンで見てきた車を通して市販車の分析の続きに入りたいと思います。
東京オートサロン2025に行ってきました。車の勉強、珍しい車を見て来ました。ロードカー編その1 – アルボンノート
前回こちらの投稿でも触れましたが、私が市販車を分析する際に注意して見ている点は6つあり、ボディライン・フロント形状とサイド形状について分析していきました。
今回は後半戦です。
リア形状・内部構造・フロア構造について触れていきたいと思います。
その4、リア構造
では、早速リア構造について触れていきましょう
リア構造で見ている点は3点あります。
ディフューザー形状にリアウイングの有無、マフラーの位置。
ディフューザーの役割をおさらいすると、車体底部(フロア)から流れてくる気流を車体後方に吸い出すようにし、フロア内を流れる気流を加速させる。
車体上部との圧力差を付けてダウンフォースを強める働きがあります。
このような原理で発生させるダウンフォースはグランドエフェクトであると説明させて頂きました。
812コンペティツィオーネのディフューザーです。
こちらも以前の投稿で少し説明はさせて頂いておりますが、改めて見ていきましょう。
センターラインを広く取っており、左右に2枚ずつフィンが設置されています。
このような市販車ベースの車で、レーシングカーのようなフロアをトンネル形状にするという造りは先ず考えづらいです。
そうすると、必然的にフロア形状は真っ平らなフラットボトム形状であると考えられます。
市販車でディフューザーを活かすにはどうしたらよいか?
方法は2つあると考えています。
一つはディフューザーフィンの始まりを車体前方に伸ばす。
ディフューザーはフィンを設けることで、気流の流路を仕切って流路を狭くする。
流路の面積が狭くなることで、前方から後方にかけて気流が押し出されることで、流速を上げています。
もう一つはリアの車高を上げ、ディフューザーに取れる面積を広くするということです。
つまり、ハイレーキコンセプトを取るということです。
一つ目の方法の注意点として、
F1の技術解説でも見ていただいた通り、ディフューザーに取れる面積が少ないとそもそもリアに流れる気流の量が少なく、ダウンフォースを発生させる量が少なくなってしまいます。
フラットボトムの場合は車高を低くすることで、流路面積を狭めてフロアの流速を上げる方法が取れますが、ディフューザーが設置されている場合は要注意です。
二つ目の方法の注意点として、
こちらもかつてF1で採用されていた手法ですが、リア車高が上がることにより前面投影面積の増加。
更にサイドの面積も広がることで、フロアから流れる気流が横から漏れ出すので、ディフューザーの効果も薄まってしまいます。
ポルシェ911GT3RS(992)のディフューザー形状も見ていきましょう。
先ほどの812コンペティツィオーネに比べるとセンターラインの面積は狭く、全体的に均等にフィンが設置されている造りです。
フィンの奥行きも812コンペティツィオーネよりも手前ですが、リアウイングが常設されているモデルであること。
駆動方式がRRでエンジンもリアに搭載されディフューザーに取れる面積が、若干狭いのではないかと思います。
なのでこの場合ディフューザーによるダウンフォース発生はあくまで補助的な機能で、前述のリアウイングを中心にしてリアダウンフォースを発生させているのではないかと考えます。
しかし、リアウイングとディフューザーは上手く組み合わせられれば、より強力なダウンフォースを発生させることができます。
更にマフラー(排気関係)の位置も関係があると考えています。
その関係性については次回触れていきたいと思います。
続いてリアウイングについて。
先ほどの911GT3RS(992)のウイングを後方から見ると、フラップが2枚に分かれている。
992型のGT3RSにはDRSが搭載されているようです。
こちらは旧型GT3RS(991)です。
こちらにはDRSが搭載されていません。
しかしGT3RSは両モデル共にステーの位置が高いです。
ウイングが低いとルーフから流れてくる気流をキャッチすることができない。
しかしウイング位置が高いとそれだけ前面投影面積も増えてしまうので、トップスピードとコーナリングを両立させるにはバランスを取らなくてはいけません。
ステーの太さについてですが、こちらも細ければ空気抵抗が少なくなりますが、剛性不足でリアウイングが左右に揺れ動いてしまい狙ったとおりにダウンフォースを発生させることができない。
太ければその分剛性は高まりますが、空気抵抗もそれだけ大きくなります。
その5、内部構造
次に内部構造についてです。
ここではエンジンとエンジンの搭載位置について見ていきます。
BMWM4のエンジンが公開されていましたので撮ってきました。
エンジンは車体の中心により近いフロントミッドに搭載されています。
このエンジンはS58B30Aと呼ばれる直列6気筒のエンジン。
直列6気筒の利点は吸排気や熱処理用パイプの配置が比較的簡単なため、ターボエンジンにとっては都合の良いエンジンです。
チューニングにおける性能向上も取りやすいことにあります。
しかし欠点として、シャフトが長くメインベアリングも増える為、剛性面やエンジン重量の面で不利を被ってしまいます。
又、直列6気筒全長が長いですが、横置きが難しい為居住性など室内空間の面でも不利です。
以上の点から、BMWの場合はMシリーズともなると、エンジンの剛性確保の為に、ロールバーが張り巡らされております。
通常モデルの6気筒エンジンにはロールバーが搭載されていませんが、後付けは可能です。
BMWブースの前にはこのように、内部構造が公開されていましたが、直列6気筒エンジンが如何に縦長かは一目瞭然化と思います。
ポルシェ964の水平対向エンジンです。
ポルシェはリアが重い為、高速域ではフロントリフトする感覚の様ですが、昔のモデルではそれが顕著に表れていたことでしょう。
しかし、ポルシェの凄いところは、ブレーキを掛けると、前後の重量配分が50:50になるように考えられており、最適なバランスでコーナリングができるという非常に考えられた造りになっています。
リアエンジンリア駆動、これだと本来駆動輪が重くてコーナリングの際に不利になるはずですが、流石と言うばかりです。
その6フロア構造
最後のチェックポイントフロア構造ですが、中々確認できるものではなかったので、簡単に説明します。
こちらはBMWM2です。
なんとこちらの車体の下には鏡が設置されていたので何とか撮ることができました。
やはり市販車ベースの車ともなると
こちらのF1マシンの様に(ハースVF-23)トンネル形状にして、グランドエフェクト発生という訳にはいかないようです。
市販車ベースの車のディフューザーはフラットボトムの為センターラインを広く取ったフロア形状になっていましたが、グランドエフェクトを採用したF1マシンは正反対の構造です。
やはり市販車でダウンフォースを発生させるには、車高をできるだけ低く取るしか対策は無いのでしょうか?
今回は2回に渡って市販車の分析をしていきました。
最後の方は若干説明が雑になってしまいましたが、如何だったでしょうか?
車好きの大半はその格好いいビジュアルに目を奪われていますが、このように違った視点から見るのも面白いかと思います。
今回でオートサロン特集を最後にしようかと思いましたが、最後に珍しいスーパーカー特集をして終わろうかと思います。
ですので、次回はオートサロンで見てきたレアなスーパーカー特集です。
スーパーカーの分析も勿論、その格好いいビジュアルにも迫っていきたいと考えています。
今回も読んで頂きありがとうございました。
F1デモラン編はこちらから
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