2週間あったバーレーンテストもあっという間に終了。
各チームC3タイヤを多く持ち込み、ロングランを通して信頼性と空力パーツの機能の確認を中心としたテストとなりました。
順調なのはフェラーリ・メルセデス・マクラ―レン。
レッドブルとアウディは思った以上に良い。
逆にキャデラックとアストン前途多難な船出(特にアストン)となりました。
この2週間を見ても、空力パーツのアップデートはそれぞれで顕著に表れていました。
早速確認をしていきましょう。
フェラーリのエキゾーストウイング。
バーレーンテスト2週目の話題の中心をかっさらったのは言うまでもなくフェラーリ。
1週目のテストでも1基のPUのみで3日間走り切ったという、抜群の信頼性を示したことでも注目を受けました。
そして余裕があるせいか、フェラーリは様々な斬新的なアップデートパーツを持ち込んできました。
第一弾はエキゾーストウイング。

写真の様に排気管の目の前に反り立ったウイングを設置。
エンジンダクトから排出される運動エネルギーの小さい排気をウイングに吹き付けて更に気流の流速を低下させる。
これによりディフューザー効率を向上させ、ダウンフォースを増やす。
これはかつてRB6(2010)に見られたブロウン(吹き付け)ディフューザーから明らか着想を得た手法。
コーナリングでは高いエンジン回転数を保ってエネルギー回生効率を上昇させることができる。
この機構は現行のPUとも非常に相性がいい造りなのです。
では、どうやってこのパフォーマンスを実現することができるのか?

その理由の一つとしてフェラーリはギアボックスを後方配置にしている。
2026年レギュレーションでは、リアアクスルラインから最大60mmのオーバーハングしか許容されませんが、フェラーリはこの制約内で排気管直前のスペースを確保するため、ディファレンシャルを後方へ移動させ、変形構造下の領域を活用しています。
当然ギアボックス(重量物)が後方に寄ったことによって、リアが重くなってしまいタイヤスクワットしやすくなってしまいます。
このスクワットによって、リア側のフロアがストールするリスクが考えられます。

フェラーリの場合はリアサスペンションのアンチスクワットをより強化することで対策をしています。

他のチームのリアサスペンションのアンチスクワット機構だってフェラーリほど強力なものは採用していない。
恐らく他のチームはギアボックス(重量物)をマシンの中心部に寄せる機構を採用している。
なのでフェラーリの様にするには、リア機構を全て再設計する必要性があります。
以上の理由から他のチームはフェラーリを簡単に真似することはできないはずです。
そしてこの構造によってトラクションが良くなるため、中低速域で特に強さを発揮することができるでしょう。
小さなボルテックスジェネレーターで損失減少
今回のマシンアップデートで気付いた点として、小さいボルテックスジェネレーターが至る所に見られるというところです。
そのボルテックスジェネレーターが多く見られた場所として
- フロントウイング
- フロア(Tトレー)
- リアウイング
の3点です。

例えばフェラーリSF-26に見られたフロントウイング翼端に付いている小さな突起。
特にフロアのボルテックスジェネレーターは各チームで配置と大きさにも大きな違いが見られる。

例えばアルピーヌの場合は、Tトレー中心に垂直のフィンが付けられている。

このチームはTトレーの両端に高さの低い突起が設けられている。

インウォッシュコンセプトのフロントウイングになったことで、ノーズ下に取り込める気流の量は恐らく増えたとみて良い。
しかし、インウォッシュなので、直線的に流れて入ってくる気流と比べて明らか気流の乱れは存在しているので、このフィンを通して整える狙いがあるのだろう。

リアウイングのボルテックスジェネレーターはフラップと翼端板に確認できた。
アルピーヌはフラップに。

ウィリアムズの様にリアウイングの翼端板に設置してきたチームも見られる。
そしてこの3ヶ所に多く見られたボルテックスジェネレーターの狙いの共通点としていえることは、
小さな渦(小さな空力的損失)を生成することによって、大きな空力損失を防ぐことにあります。

例えば市販車の場合にもみられるこちらのルーフに取り付けられたボルテックスジェネレーター。
速度域による抗力の違い。市販車を例に空気の働き方を見ていきましょう。 – アルボンノート
こちらの項でも説明をしているので是非ご覧になって欲しい。
つまりこのボルテックスジェネレーターが何を意味しているのかというと、大きな損失を防ぐことは、回りまわってダウンフォース生成に繋がるということなのです。

バーレーンテスト前半開幕、遂に11チーム全てがコース上に揃い踏み。 – アルボンノート
こちらの項でもフロアエンドの切り欠きによって渦(エアカーテン)を発生させてリアタイヤに乱流の直撃を防ぐ機構も確認できます。
フロアエンドの切り欠きの用途(マウスホールによってディフューザー容積を補うなど)、チームの解釈によってリアエンドの効果は違いますが、こちらの部分にも渦を発生させることで損失を防ぐのと同義の考え方が用いられているのです。
開発自由度の高い現行マシン
今季から施工されている現行レギュレーションのマシンは兎に角広義での解釈が可能で、開発自由度がかなり高いマシンとなるでしょう。
レギュレーションの抜け穴を潰したとされている今季の技術規則ですが、各チームで至るところに解釈違いによる構造の違いが散見される。

インウォッシュコンセプトの筈なのに、インウォッシュボードは何故かアウトウォッシュを発生させることができる。
インウォッシュボードとは?と思ってしまったものです。(実際インウォッシュ(アップウォッシュ)も発生している。)
しかしこれだけコンセプトに違いが出るということは、各チームで速く走らせるための考え方にそれだけの違いが表れているという風にも考えられます。
そういった意味では技術競争が盛んにおこなわれるので楽しみな反面、抜け穴を突いたチームによる独走一強のリスクも十分に考えられます。
このレギュレーションの理解度が最も高いと感じられたのは前述通りフェラーリ。
フェラーリはエキゾーストウイングだけでなく、他にも独自コンセプトのパーツを持ち込んできています。
それはまた次回公開する予定です。
今回はバーレーンプレシーズンテスト2週目でアップデートされた空力パーツの分析を行いました。
各チームコンセプトの違いはあれど、行きつく先は何となく似たり寄ったりということが分かったかと思います。
開発自由度が高い今季のマシン、これをどう理解しどう発展、アップデートさせていくのか。
各チームのエアロダイナミストの手腕が問われていくことになるでしょう。
次回は前述通りフェラーリの斬新な技術構造の2弾と、その他空力機構のアップデート。
データから見るマシンパフォーマンスの分析も行ってみたいと思います。


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