今週はアメリカラウンドの第2戦目、メキシコグランプリです。
残り5戦とシーズン終了が迫ってきていますが、マシンの戦闘力は拮抗しており、それによってチャンピオンシップの行方も分からないものとなっています。
大規模アップデートを入れたが機能しなかったマクラーレンとメルセデス。
セッティングを外したかの様に思えますが、実際のところどうなのか?
今回のメキシコも少し特殊なサーキットなので、本当の序列が明らかになるのは次戦以降と考えて良いでしょう。
標高2285m、特殊なセッティング
ウイングセッティングの確認に入りたいところですが、ここ最近画像がアップされてきていないので確認をすることができません。
このコースは直線が長く典型的なストップ&ゴーのレイアウトです。
しかし、フラップの角度は例年では最大限付けています。
ロングストレートにも関わらず何故なのだろうか?
メキシコGPで使用されるエルマノス・ロドリゲスは特殊なコースです。
以前下記の投稿でも触れています。
F1空力学基礎。温度や標高による空気密度の違いがマシンに与える影響とは? – アルボンノート
がこちらでも簡単に説明させて頂きます。
標高2285メートルという非常に高地にあるサーキットです。
海抜0メートル地点に比べ酸素濃度が22%も低く、他のコースに比べるとダントツで空気が薄いです。
空気が薄いと何が起きるのか?
先ずは空気が薄いので、それに伴いダウンフォースの量はそれだけ少なくなります。
ドライバー自身にも影響があり、高山病を引き起こすリスクがあるので早めに現地入りし低酸素の環境に体を慣れさせます。
その分空気抵抗も減少します。
セクター1はストレート→シケイン→ストレートです。
ストレートはこれまでのパフォーマンスを考えると、フェラーリが有利ではないでしょうか?
ミニDRSの仕様変更を強いられたマクラーレンはアメリカGPを見ているとこの区間では苦戦が予想されます。
しかし、コーナリングは抜群に良いので低速のシケインの区間で取り返しをしたいところ。
セクター2は低速区間→高速区間です。
高速区間はサスペンションが硬いと横の衝撃に耐えられずスピンアウトする可能性があるので注意が必要な区間です。
マクラーレンはこの区間で本領発揮をするのではないかと見ています。
メルセデスのリアの不安定さが露呈しないかが心配になところです。
セクター3は低速区間。
低速コーナーオンリーですのでグリップをそれほど要しません。
その代わりトラクションの良さが求められるでしょう。
マクラーレンとメルセデスがこの区間を有利に進められるのではないでしょうか?
しかしこの両チームの共通点として、アメリカでアップデートを入れたにも関わらず、それほど良いパフォーマンスではなかったので、なんとも言えない部分があります。
今回もトラックエボリューションが強烈とのことで、今回の予選も後出しが有利になるでしょう。
アップデートパーツの確認
では先ほどのコースの説明を踏まえて、アップデートパーツの確認をしていきましょう。
メキシコは空気が薄く冷却効率が非常に厳しいコースですので、冷却関係に関するアップデートが取り入れられています。
前回のアメリカで見事優勝を飾ったフェラーリのアップデートからです。
元々ルーバーの大きさが目立つSF-24ですが、メキシコ仕様では更に大きいルーバーが持ち込まれました。
ルーバーはそれだけではなく、コックピット側面にも大きなルーバーが取り付けられています。
冷却効率の確保を優先する考えは分かりますが、空力的に見た時に懸念材料はあります。
何度も説明をしてきたと思いますが、ルーバーから排出された気流は、運動エネルギーが小さく、その場に縮まろうとしてしまう。
いわゆる高圧の気流です。
そこにマシンの前方から流れてくる気流と衝突することによってマシン上部で流れる気流は大きく乱れてしまいます。
そうするとリアの空力効率は一気に悪くなってしまいます。
それだけでなくフェラーリにはフロントウイングのアップデートも入っており、アウトウォッシュを促進する形となってます。
フラップ最上段の前後幅も膨らみがあった旧型から、前後幅を削ってアウトウォッシュの発生を助ける働きをしています。
フェラーリは前回のアメリカでフレキシブルフロントウイングを使用していたことが明らかになりました。
高速域でフラップが寝ることで、フェラーリが持つストレートのトップスピードを活かすことができます。
次は前回大型アップデートにも関わらず、まさかの結果に終わってしまったメルセデスです。
メルセデスの冷却機構のアップデートも確認ができました。
ルーバーは他のチームと同様に巨大化し、冷却効率の促進です。
しかし、こちらはフェラーリの様にスライダーの気流通路にルーバーを設置していません。
メルセデスの場合は空力効率を優先に取ったケースだと言えます。
メルセデスは前回のアメリカでは、リアの安定感が明らかに欠けていたので、このアプローチはある意味妥当かと思います。
冷却関係の大きなアップデートと言えばブレーキ周りです。
ここで確認できるのはメルセデスのブレーキドラムの開口部の面積。
基本サスペンション周りの空力効率を求めたいため、ブレーキダクトは空力効率を損なわないようにできる限り小さめにセッティングされます。
しかし、メキシコはブレーキに対して非常に厳しく冷却効率も最悪なコースなので、ここでは空力効率を犠牲にしてでもブレーキの冷却効率を優先して考えます。
つまり、メルセデスはブレーキドラムの面積を広げてきています。
ブレーキディスクにも冷却効率を考えて、約1000カ所の穴が開けられています。
ダウンフォースの発生効率がカギを握る
今回は空気が薄くダウンフォースが発生しにくいコース。
勝負のカギはダウンフォースの発生効率の良さで左右すると考えています。
特に重要な要素はフロアから発生されるダウンフォースです。
フラップの角度から発生されるダウンフォースだけでは限界があるので
敏感なフロアが望ましいと考えます。
敏感なフロアとは、低速域からでも強力なダウンフォースを発生してくれる、風や速度域に対して感度が高いフロアの事を指します。
本来フロアが敏感過ぎると、ダウンフォースによる車高低下でフロア下の隙間が無くなり、ポーパシングを引き起こす原因になってしまいます。
縁石に乗り上げたことによるフロア面積の変化も避けたい要素の一つです。
しかし今回のコースに関しては低速域からダウンフォースを発生させてくれるフロアが必要です。
シーズン終盤なので、簡単に変えられる部分ではありませんが。
レッドブルがTトレーを通して、車高調整をしていた疑惑が掛けられたことで、Tトレー周辺の車検が非常に厳しくなりました。
しかしそのお陰かマシンの底面の画像をたくさん見ることができます。
メルセデスのブレーキドラムです。
画像でも分かるようにドラムの開口部が広く取られています。
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