前回のハンガリーGPではピアストリがF1初優勝、しかしチーム戦略がチグハグで後味の良くないレースでした。
さて今週は、前半最終戦ベルギーGPです。
これが終わると約1ヶ月のサマーブレイクに突入します。
前半戦の最後はどのチームだって、良い締め方をしたいはず。
ハンガリーで導入されたアップデートの効果は、このサーキットで明らかになります。
ウイングセッティングの確認
早速恒例のウイングセッティングの確認に入っていきます。
やはりウイングフラップは寝かせているチームが多いです。
メルセデスのようにフラップ翼端が突き出しアウトウォッシュ促進を狙ったウイング形状は、こういったドラッグを低減させたい高速サーキットでこそ本領が発揮されることでしょう。
前回ハンガリーで優勝したマクラーレンは、フラップ面積が広い上、レッドブル、フェラーリ、メルセデスとは違って翼端が下がっており、アウトウォッシュの効果は少ないように見えます。
中団勢のウイングセッティングにも注目してみます。
やはりこちらもロードラッグ仕様を採用しています。
こうしてみるとアストンマーティンのフラップ翼端には切れ込みが確認できません。
視点をウイングの横に移してみると、フラップと翼端板は何と繋がっています。
この繋がりが大きなドラッグを生みそうなのですが・・・
ウィリアムズも切れ込みが少ないリアウイング。
傍から見れば、アウトウォッシュが少なく、ドラッグが多く生み出されるのでは・・・というウイングデザイン。
しかし、この2チーム、ストレートのトップスピードは速いです。
トップスピードが元々高い故のウイングデザインなのか?
フロントウイング翼端板にセンサーが付けられていることで注目されているザウバー(写真上)、とアストンマーティン(写真下)です。
写真を見ていただけると分かると思いますが、アストンの方の翼端板の方が、アウトウォッシュがより強力なデザインに加えて翼端板面積が小さくドラッグも小さいです。
ザウバーは翼端板が大きく、フロントを通る気流の時点でドラッグが多めのマシンです。
レッドブル、まさかのキャノンデッキ復活
ハンガリーGPでフェルスタッペンのマシンに入れてきた、キャノンデッキを撤廃しました。
これには驚きです。
一部報道には冷却効率の向上という見方をされている記事を見かけましたが、本当は違う。
F1第13戦ハンガリーGP。FP1・2。評価の難しい初日、フェラーリ復調か? – アルボンノート (albonnote.com)
上記の投稿でもレッドブルのアップデートについて触れましたが。
リアのエンジンカウルの面積を削ることで、リアのドラッグ削減。
つまりリアの流速を速めることで、フロントとリアの圧力差、圧力勾配を考えた造りになったことで、マシン全体の空力バランスが良くなったとコメントしました。
ベルギーはロードラッグの方が有利なのに何故キャノンデッキを復活させたのか?
エンジンの冷却効率の方が重要ということだろうか?
理由はどうあれ、レッドブルの迷走は続きそうです。
ドラッグ低減という観点で、フェラーリはフロントウイングの3.4枚目のフラップの前後幅を小さくし、フラップによる気流の跳ね上げを小さくし、ドラッグの低減を狙います。
私の個人的な考えですが、こうした方が寧ろフロアトンネルに導ける気流の量自体は増えるし、サイドポッドで受け止められる気流も増えると思うので、良いのではないでしょうか?
それに、フェラーリは高速サーキットでポーパシングが起きていたので、フロントのダウンフォースを削ってマシンの空力バランスを見直したのかも知れません。
恐らくこの仕様は後半戦にあるイタリアグランプリでも使ってくるだろうと思われます。
アストンは前回のハンガリーではフラップ最上段に付けていたガー二ーフラップを止めました。
こうしてみるとフラップ間に隙間(スロット)があるのですが、マクラーレン等トップチームの多くはそこに着目しています。
スロット幅が広ければ、ノーズ下を通して、フロアトンネルに流せる気流が増えます。
現行レギュレーションはグランドエフェクトによるものなので、空力効率が良くなります。
全長が最も長いグランプリコース
スパはご存じの方は多いかと思いますが、一周が7.004kmと全グランプリ中最長のサーキットです。
タイヤ負荷はかなり高い、横荷重による負荷も相当なものです。
しかし、スパ24時間など、他のカテゴリーのレースも多く行われるので、アスファルトグリップは高め、その分トラックエボリューションは低めです。
なので周回の前半で接触しマシンを壊してしまうと、ピットに戻るまでの間のロスタイムがかなり長くなってしまいます。
大半のサーキットに言えることですが、特にスパはレース開始の1コーナーには特に気を付ける必要性があります。
ベルギーは1コーナー、ラ・スルスから5コーナー、レ・コームまでほぼ直線区間なので、1コーナー立ち上がりからのトラクションに加えストレートスピードがかなり重要になってきます。
そして後半セクター3、ターン15ポール・フレールからバスストップシケインまでは再び直線区間が続きます。
では、ストレートスピードのみ考えていれば良いのかというとそうではありません。
セクター2ではセクター1・3とは対照的に高速コーナー中心の区間になりますので、ダウンフォースが全くないというのははっきり言ってまずいです。
セクター2で有名なコーナーといえば、プーオンです。
ターンインは約260km/h、そこを通過すると全開でプーオンを駆け抜けていきます。
どの区間で速く走りたいのか?どの区間を妥協するのか?というチームによって妥協点が違ってくると思います。
もう一つ気を付けたいのが、”スパ・ウェザー”と呼ばれる特有の天気です。
コース全長が長いので、ある区間は降っていてもある区間は止んでいて路面はドライ・・・ということも多々見受けられます。
コースの分析とは関係ありませんが、スパといえば何といってもオー・ルージュです。
約80mの坂を2秒足らず、アクセル全開で駆け上がっていくマシンは壮観だそう。
しかし、アクセル全開で駆け上がった先のラディオンはブラインドコーナーです。
この区間は過去に悲惨な事故が多く起きているということも忘れてはなりません。
そんなスパには唯一であり最悪の欠点があります。
それは交通の便が最悪だということです。
F1ドライバーの場合は地元警察が先導してくれるのですが、その地元警察が誘導しなければならないドライバーを置いて行ってしまい、一人で先に行ってしまうそう。
何のための先導でしょうか?笑
今回もコースと、マシンのアップデートについて分析していきましたが、ここ数戦はトップチームのマシンの戦闘力が本当に拮抗しているので優勝予想がより一層難しくなっています。
前戦得意の低速コースで速さがあったRBも今回はまさに地獄のグランプリと言ってもいいくらい相性が悪いコースだと考えています。
天気が微妙なので、苦しみそうなチームも雨さえ降れば、勝負を五分に持っていける可能性はあると思います。
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