バーレーンテスト2024終了。それぞれのチームを振り返ってみる(第四弾)

マシン分析

バーレーンテストの振り返りも今回が最後になります。

今回はトップ3

レッドブル・フェラーリ・メルセデスの3チームを振り返っていきます。

今回紹介する3チームはそれぞれに独自製法されている部分があり見応えがあって面白かったです。

その3チームが持ち込んだ独自製法は、マシンパフォーマンスにどんな影響を与えるのでしょうか。

メルセデスから見ていきましょう。

メルセデスの新構造は不安定も伸びしろあり

メルセデスはシェイクダウン時にフロントウイングのフラップが話題になっていました。

最上段のフラップとノーズをつなぐ接続部はは非常に細く”ワイヤーフラップ”と呼ばれている。

レギュレーションの穴を付いたこの部分は、ライバルから抗議は受けていないがFIAが承認するかどうかは別の話になる。

このワイヤーフラップはフロントウイングについて定めた技術規則第3.9.1条eを完全に適合しています。

この規則では、「最後部のクローズドセクションを除いて、全てのクローズドセクションの最後部のポイントは上から見た時に見えてはならない。」

つまりクローズドセクションは各ウイングのフラップ、後端が見えても良い部分は最上段のフラップのみということです。上から2~4番目のフラップは、上のフラップと後端が重なっている必要があるということです。

メルセデスのワイヤーフラップはこのレギュレーションを守るために存在しています。

実際にフロントウイングを見ていくとインウォッシュを起こしてフロアに向けて気流を流し込もうとしているのではないか、という構造にも見えます。

しかし、テストを見て感じたのは、メルセデスのリアはまるっきり安定感を感じないものでした。

アストンマーティンを振り返った際にメルセデスは新型ギアボックスを採用したと話しました。

メルセデスはサスペンションもそれに合わせてプルロッドからプッシュロッドに変更しましたが、ロッドの角度が浅く稼働域の面で不利になるだろうと分析しました。

角度が浅いのでセッティングという面でも苦労するはずです。

エンジンカウルはあるのか?というほど絞り込まれ、前方のルーバーで排熱を行う。

それだけではなく、ストレートと高速コーナーではポーパシングが起きてました。

まだ治っていなかったんだと率直に思いました。

3日目にはフロントサスペンションのアッパーカット後部の位置を下げ、アンチダイブを強めようとしていました。

昨年に引き続き新たな問題が露呈したメルセデス。

しかし、シーズン中のアップデートにより常に表彰台争いを可能にした。

新型ギアボックスと今年から採用のリアサスペンションのプッシュロッドを何とかするのは難しいのでセットアップに苦しむと思います。

今年もアップデートを重ねて常に上位争いできるかはチームの組織力にかかっています。

フェラーリはシンプルな構造でレースペース改善に成功

フェラーリSF-24は多くの部分にレッドブルのデザインを踏襲している。

2022年のバスタブサイドポッドのようなデザインは見受けられず、シンプルにまとめられた空力デザインですが、それが功を奏しているように見えました。

ダウンウォッシュ型のサイドポッド化に伴いサイドポッドの冷却機構のレイアウトも一新

バスタブ型サイドポッドでは上面に熱を排出するルーバーがありましたが、これが前から流れてくる気流の流路を邪魔するような形になってしまいました。

ダウンウォッシュ型ではその部分に流速の速い気流を通したいため、ルーバーがエンジンカウル両脇に移りました。

これでルーバーから排熱される空気が気流の邪魔をすることが無くなるでしょう。

フェラーリにはサイドポッド後方に開口部

これは”ハロ・ウイングレット”と呼ばれているみたいです。

サイドポッドインレットの下にはSダクトから境界層で遅い気流を引っ張り上げているのではないかと予測します。

長いノーズで遅くなった気流をSダクトを通して吸い上げて、アンダーカットの気流を整流するというアイデアなのかもしれません。

リアサスペンションはトレンドのプッシュロッド式にせず、プルロッドを継続した。

テスト走行を見ていた感想は予選ペースは今年も速いですが、それ以上に光ったのはレースペースの改善です。

昨年は予選で良いアタックができても決勝ではレッドブルに対して勝負になっていませんでした。

今年は予選ペースが課題という話も出てはいますが、それ以上にレースペースが良くなったことは大きな収穫でしょう。

シンプルになった分、セッティングの幅が広がり、決勝では昨年以上に勝負を掛けることができると思います。

文句のつけようが無いレッドブル

今回も振り返りの大トリはレッドブルですが、テストに持ち込まれたマシンはまた衝撃を与えるようなデザインでした。

以前以下の投稿ではお話しさせて頂きましたが、

2024年バーレーンプレシーズンテスト開幕。少しずつ明らかになる勢力図 – アルボンノート (albonnote.com)

サイドポッドインテークは2カ所あること。

ハロの後部に開口部が見受けられたことについて触れました。

ネット上ではキャノンデッキと呼ばれているみたいなのでここでもそう呼ばせて頂きます。

このキャノンデッキで流す気流も冷却機構の一部として扱われ、役目を終えた空気は後方に向けて排出される。

冷却として使われている証拠がこちらの写真です。

カウルを剥ぐと小さなラジエーターのようなものが確認できます。

デッキ後部はチムニー(煙突)ダクト形状でダクト出口がディフューザー上面に向けられて設置されている。

サイドポッド上部と、アンダーカットを通ってきた気流と合流しリアの空力効率を更に向上させようとする。

ディフューザー形状は左右トンネルから気流を引っ張ろうとしているウィリアムズとは対照的に

センターラインから気流を引っ張ろうとする作りになっています。

ディフューザ形状は昨年よりも複雑化しています。

今回のテストでも圧勝を予感させるようなパフォーマンスを見せてくれました。

注目すべき点としてペレスにも乗りこなせるのか、という点で見ていましたが、ペレスも悪くないパフォーマンスでした。

初日はピーキーなリアに対して苦戦気味だったフェルスタッペンもテストを通じて簡単に乗りこなしていました。

ロングランはフェラーリに対して0.3秒もの差を

フェラーリの武器でもある予選ペースでも0.22秒の差を付け完全にお株を奪う形となりました。

現状維持に留まらず常に攻めたマシン開発を続けるチームの姿勢は称賛に値します。

テスト全体を振り返って

今回でプレシーズンテストの振り返りは終了です。

これまでに分析してきたことを踏まえたうえで

私が考える序列は以下の通りです

1 レッドブル 文句のつけようが無い

2 フェラーリ 予選、レースペース共にレッドブルに及ばず

3 メルセデス リアの挙動が心配。ポーパシングも気になる

4 マクラーレン 攻めようとするとリアが滑る。

5 アストンマーティン コース特性によっては表彰台争い

6・7 RB・ザウバー 全体的に悪くない。コースに応じて序列が変わる

8 ハース 昨年より一歩前進

9・10 ウィリアムズ・アルピーヌ ウィリアムズ…リアが不安定すぎて怖い

アルピーヌ…止まらない、曲がらない、重い、10チーム中最も心配

になるんじゃないかという個人的な予想です。

さて、明日からいよいよ2024年シーズンが開幕します。

これまでの分析通りになるのか、違った結果になるのか・・・

どうなるか見てみましょう

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