新車発表もいよいよ終盤。
今回はメルセデスの新車W15について触れます。
昨年型W14はまさかの一勝もできませんでした。
原因は後述しますが、ゼロポッドの継続、コンセプトを間違えたままシーズンインしたこと。
これにより開発競争に大きな後れを取ってしまった事でしょう。
いったい何がそうさせてしまったのか。
また、新車W15でメルセデス復活は実現するのか?
そういった部分も含めて見ていきましょう。
ゼロポッドを捨てきれなかったW14
前年パフォーマンスの低下の象徴としてあれだけ指摘を受けていた”ゼロポッド”を昨年型W14にも開幕から搭載していました。
当時から、ゼロポッドを止めるという噂が飛び交っていたので、開幕バーレーンでこのコンセプトのマシンが持ち込まれたときには、驚きました。
結果は昨年同様全盛期と比べて悲惨なもので、このコンセプトを推し進めていた最高技術責任者のマイク・エリオットが更迭されました。
ゼロポッドにしていたのでクーリングシステムの多くを中心に移しています。
エンジンカバー後部は他車と比較して高い部分で左右に大きく膨らみ、F1-75に影響を受けたとみられるような窪みがありました。
しかし、これはあまり機能していなかったといえるでしょう。
第7戦目モナコでついにメルセデスはゼロポッドを捨て、ダウンウォッシュ型のサイドポッドに変更。
これによりセンタークーリングだった冷却システムにも大きな変更が加えられました。
フロントサスペンションのアッパーアーム前部はバルクヘッド上部に取り付けられ、トレンドであるアンチダイブ機能が取り入れられました。
ただ、プッシュロッドとノーズの取り付け部にはバルジが付いており、空気抵抗の一因になっています。
W14はイギリスGPでフロントウイングと翼端板のデザインを全面的に変更するアップデートを行い、フロアへの空気導入率を高めることによって、低速域でのパフォーマンス向上を狙いました。
フリー走行を見ていても低速セクターはパープルセクターを獲る等、効果は大きかったかと思います。
実際次戦のハンガリーの予選ではハミルトンがポールポジションを獲っています。
しかし、高速コーナーでのパフォーマンスは良いといえるものではありませんでした。
アップデート前のノーズと比較して、アップデート後のノーズは角度が付いている形になり、高速域で空気が剥離を起こしてダウンフォースを得られていないのではないかと感じました。
ゼロポッドによって後輪タイヤにも気流が直撃することから、ドラッグが非常に大きく、ストレートスピードが遅い原因の一つにもなっていましたが、メルセデス製PUもパワーがありませんでした。
メルセデス製PUを供給する、アストンマーチンやマクラーレンも同様で、ストレートが遅い部類のチームでした。
これらのマシンはストレートエンドでクリッピングを起こしています。
つまり、回生エネルギーを使い果たしてしまい、ドライバーはフルスロットルにも関わらず、トップスピードが伸びないという弱点を抱えていました。
回生エネルギー切れはもちろん他のPUサプライヤーでも起きていましたが、メルセデスPUは早い段階でこの現象が起きてしまいました。
特にドラッグの大きい空力セットアップが必要なコースでは厳しいハンデとなってしまいました。
W15
先ずカラーリングについて触れると、正面から見た時にシルバーアローが復活しています。
側面に目を向けると、黒が目立つ、いわゆる半分シルバー半分黒といったような色合いです。
完全にシルバーに戻ったわけではないですが、それでも半々くらいの比率になったことは、メルセデスファンにとっても嬉しいことではないでしょうか?
公開されたメルセデスW15も昨年同様に独立したコンセプトを取ってきています。
そのコンセプトはフロントウイングから始まり
メインフラップがノーズから独立、メインフラップ中央部が路面に近づくように湾曲。
ノーズ下を通る負圧を強めて、ノーズ下の整流と圧力差によるダウンフォース向上を狙っています。
フロントウイングのフラップはノーズ(内側)と翼端板(外側)とで役割を分けているように見えます。
ノーズ側は気流を跳ね上げようとせずにそのままフロアに通すような形に。
翼端板側はアウトウォッシュの働きをより強めるような形状になっています。
と思っていたらW15のシェイクダウンでは、発表会とは違ったフロントイングを持ち込んできました。
フラップ最上段の内側とノーズの接続部がかなり細くなっている。
以前のレギュレーションで見られたフロントウイングの内側が切り欠き状のように見えなくもありません。
切り欠きを付けることによってY250ボルテックスを発生させようとしているのでしょうか?
プッシュロッドはW14に見られたロッドとノーズの接続部についていたバルジが無くなりすっきりしたデザインになりました。
ドラッグ削減にも一役買っていることでしょう。
そして、W15が取ってきたもう一つの独自コンセプトがサイドポッド形状です。
多くのチームがRB19のソリューションを取り入れてきていますが、メルセデスのサイドポッドインテーク形状は、逆三角形の形をしています。
逆三角形にしたことで、ドラッグの軽減もしつつ、アンダーカットの抉れを作り出すことで、ダウンウォッシュも作りたいということでしょう。
W14ではミラーウイングステー下に、サイドインパクトストラクチャー(側面衝撃吸収構造)が剥き出しになっていましたが、W15では流石に引っ込めてきました。
インテーク下部が絞られていますが、RB19に見られるような張り出しはしっかりついており、そこはトレンドに乗ったような形になりました。
W14はサイドポッドがそもそもなかったので、スライダー形状を付けていませんでしたが、W15ではそれを確認することができます。
しかし、他チームに比べるとスライダー形状はそこまで窪みが無く、緩やかな形です。
リアサスペンションは、プルロッドからプッシュロッドに変更。
昨年のW14はW13同様セッティングのスイートスポットが非常に狭く、適切なセッティングが見つかりにくいという状態でした。
プッシュロッドに変更して、設計の自由度増と、セッティングに幅を持たせてスイートスポットを探りやすくすことが目的ではないでしょうか?
そしてもう一つ注目すべき点が、ドライビングポジション(であっているのだろうか?)が100mm後ろに下がりました。
それに伴いインダクションポッドの開口部も100mm後ろに下がりました。
ドライバーもシートに座ればパーツの一部。
重量配分は非常に重要な問題です。
前年からチームにとってドライビングポジションは大きな問題の一つでありましたが、W15で漸く解決の方向に向かいそうです。
新車発表が例年に比べて地味だったメルセデス。
シェイクダウンで早速別仕様のパーツを試したりと、マクラーレン同様に何かを隠し持っているに違いありません。
どちらにせよ今のレギュレーションになってからメルセデスは独自コンセプトによって速さを探しているような感じです。これはこれで面白いと思います。
メルセデスラストイヤーのハミルトンに花を持たせたい
私自身はハミルトンが何故、メルセデスを離脱して、フェラーリに移籍するのか、という詳しい理由はよく分かっていません。
しかし、長年チームにいてくれてたハミルトンに対して何とか花を持たせたいとチームは思っているはずです。
新レギュレーションに変わって今年で3年目
この二年で勝利したレースは2022年のブラジル、ラッセルの初優勝によるたったの1勝。
パワーユニット時代が始まった2014年からずっと勝ち続けてきたメルセデスが、ここまで沈むとは正直考えていませんでした。
そして2025年以降はハミルトンの移籍によってメルセデスのスタッフが大量に離脱する恐れがあるという話も飛び交っています。
メルセデスはこの先どうなってしまうのか?
そのためにも今年は常にチャンピオン争いをしてチームの価値を示す必要があるのではないでしょうか?
新車発表はこちらも参照
スクーデリア・フェラーリ2024年マシンSF-24。コンセプト一新で狙う王座奪還 – アルボンノート (albonnote.com)
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