マシンが公開されると開幕秒読みという空気感が高まってきますね。
しかしこの短期間で、アンドレッティの参戦延期
ハミルトンが2024年限りでメルセデスを離脱し、2025年からフェラーリへ電撃移籍という開幕前から衝撃的すぎるニュースが飛び交いました。
2025年まで契約を結んでいましたが、契約というものはこの世界ではあくまで口約束程度のものでしかないんだということを痛感させられました。
さて、先ほどの衝撃的なニュースに比べて影が薄く感じてしまいますが
先ず10チームの中で最も早い発表となったハース。
新車発表の日程発表が最も遅かったチームですが、まさかのトップバッターになるとは思っていなったので驚きです。
昨年はコンストラクターランキング最下位に沈んでしまったハース。
今回は新車のカラーリングに交えて、2023年のマシンを振り返っていきます。
VF-24
2月2日に公開されました
ハースの2024年型マシン
”VF-24”です
10チーム中最も遅い日程発表克つ、トップバッターということでカラーリングのみの発表ということになりました。
カラーリングされているマシンのベースは、VF-23でしょうが
全体的に黒が増えたデザインになりました。
昨年の新車発表を思い出してみてください。
多くのチームが黒を基調としたマシンを公開してきたと思います。
塗装をすればその分車重は重くなりますので、カーボン地の面積が増えたことで少しでも軽量化を図りたいんだという意図が感じ取れます。
なのでカラーリングのみの発表とは言え決して気は抜けません。
・・・とカラーリングのみの発表だと思っていたら、微妙に違うところが出てきました。
プロジェクターでの発表だからと思って油断しました(笑)
サイドポッドに関しては、終盤に導入したレッドブルのようなダウンウォッシュ型をVF-24には最初から投入しています。
インテーク下部の張り出しもレッドブルのソリューションそのものです。
インダクションポッドは、三角形のロールバーだけでなく丸形の吸気口が付きました。
下の写真はカタールの時のマシンだったので、熱効率に関しては少し特殊な構造になっていますが
公開されたVF-24の構造が通常だと思って大丈夫です。
シャークフィンの横も下の写真は傾斜がきつくなっておりロールバー横のフィンで下向き流れを作ろうとしていますが、上のVF-24はなだらかになっています。
フロントウイングも昨年はフラップの最下段がノーズ先端よりも若干張り出していましたが、VF-24では張り出しが無くなりました。
フロア下に少しでも空気を流す量を多くしようという狙いでしょう。
最後の違いとして、VF-23では絞られていたエンジンカウルの面積がVF-24では広がりました。
昨年のハースはどのサーキットにおいてもビームウイングを生かせていたとは言えませんでした。
しかしリアウイングの効果は高かったので、ならリアウイングにぶつけるような構造にしようということで面積を広げたのではないでしょうか?
昨年のリアウイングステーはほとんどのサーキットでは2本ついたものが持ち込まれていましたが今回の発表ではステーは1本のみでした。
・・・とここまで説明しましたが、実際にテストで本当にこの仕様を使うかどうかはまだ分からないので、半分本気半分冗談くらいでいいんじゃないでしょうか?
2023年のアップデート
”白いフェラーリ”と揶揄されるほどでした。
これはPU供給先のフェラーリと同じパターンです。
それもそのはず、供給部品はPUだけでなく、ギアボックス、サスペンションを始め、その他のパーツまで同じなので”白いフェラーリ”と揶揄されるほどでした。
2022年シーズン後半にはフェラーリF1-75を丸々コピーしたようなアップデートを行っており
昨年型VF-23はその正常進化型でした。
しかし、シーズン中のアップデートは本家のフェラーリを後追いせず、フロントウイングやフロアエッジを何度か変更する程度の手直しに留まっていました。
モナコで投入したフロントウイングは、フラップ上部に大きな変化はないものの、全体的にフェラーリのフロントウイングに寄せたデザインを投入してきました。
フェラーリが採用しているセパレーターが付いており、角度からするとアウトウォッシュを発生させてウイングの外側に気流を流すデザインになっています。
アメリカGPではダウンウォッシュ主体のサイドポッドに変更。
ハースはここへきて漸く大規模なアップデートを取り入れました。
サイドポッド前端はレッドブルのように下を張り出し、アストンマーチンに似た深い溝を付け加えました。
それまではフェラーリが使用していた”バスタブ”型サイドポッドを使用していましたが、このアップデートにより全体が一気に絞られ
サイドインパクトストラクチャー(側面衝撃吸収構造)の一部が突き出して見えるほどでした。
サイドインパクトストラクチャーを変えるとなるとモノコックの設計自体を変えなくてはいけなくなるので、このような形になったと考えられます。
先述のようにコンストラクターランキング最下位になった要因としては、度重なるアップデートがあまり機能せずパフォーマンスが向上しなかったという点が挙げられるでしょう。
ドライバーの評価は二分し、一人は新仕様のマシンを好み、もう一人は旧仕様に戻すなど
開発の方向性が分からなくなる事態に陥りました。
ライバルと目されていたアルファタウリなどは、レッドブルの設計哲学を取り入れてからパフォーマンスが飛躍的に上昇していたので、それに付いていくことができなかったのだと思います。
予選は速いが・・・
昨年のハースは予選でトップ10に入ることは多かったですが、決勝になるとずるずると順位を落としていく・・・というパターンが多く見られました。
特に決勝レースでは、タイヤのでグラデーションが顕著に出ていました。
この原因としては、
リアサスペンションが硬いため柔軟性が無く、高速コーナーではタイヤを酷使してしまった。
ディフューザーのフェンスが低かったためフロアを通して作られたボルテックス(渦流)を潰すような形になりリアダウンフォースが不足していた
ことが挙げられます。
リアサスペンションはフェラーリと同じプルロッド式、ギアバックスも供給しているので恐らくケーシングもフェラーリ製でしょう。
マシン構造もフェラーリに似せているので、空力にも似たような影響が生じ、本家同様にリアサスペンションを固くせざるを得なかった。
それ故に柔軟性が無くコーナーをスライドしてしまい、タイヤを痛めつけてしまったということになります。
ディフューザーに関しては、後半戦でのフロアアップデートに伴い、ディフューザーの後端上面を跳ね上げる形状に変更。
ディフューザーはキックポイントの面積が広ければ広いほど効果は増しますが、ハースの場合、ディフューザーのフェンスに高さが無いので
フロア内で作られた渦が潰れてしまい、フロアシーリングができていません。
決勝時のタイヤ摩耗が酷く、それを改善したいがためのアップデートでしたが、以上の理由から改善があまり見られず、結局シーズン中の解決はできませんでした。
またアップデートの投入が遅れたのは、予選で時折シングルグリッドを獲得するなど調子が良かったために中々投入に踏み切れなかったのだと思います。
多くのチームがレッドブルの模倣をしてくるとはいえ、細かい部分には必ず違いが表れてくるはずなのでそこでどう差をつけられるかが焦点になるはずです。
新代表小松さんに期待
カラーリングのみの発表とはなりましたが、冒頭でお話しした通り塗装によって重量が変わってきてしまうので、カラーリングのみの発表であっても油断はできません。
ましてや他チームに比べて資金繰りが苦しいハースにとっては、やれることはやっておこうという気概が感じられます。
テストでいいパフォーマンスが発揮できるマシンを持ち込み
シーズン中の少ないアップデートで効率のよいアップデートができるかが
今年も焦点になるでしょう。
新しいチーム代表には小松礼雄さん。
前代表のギュンター・シュタイナーも非常にインパクトのある方でしたが、小松さんが今後どのようにチームを運営していくか、楽しみなチームでもあります。
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