F1第22戦ラスベガスGP。持ち込まれたパーツ、セッティングの確認と予選決勝の展望

マシンアップデート分析

F1は2週間の休みをはさんで、いよいよ今シーズン最後の3連戦に突入します。

アメリカラウンド最終戦、ラスベガスGPです。

この2週間の間に、アルピーヌが2026年からメルセデスPUの搭載が決定。

レッドブルのペレスが、新規スポンサーの獲得により2025年シーズンのレッドブル残留が濃厚とされる等のニュースも入っています。

RBはレッドブルRB20に使用されているリア周りを取り入れたアップデートを敢行する模様。

しかし、これは来期に向けたパーツテストの意味合いが強い為、パフォーマンス向上により上位進出が狙えるというアップデートではなさそうです。

ウイングッティング確認

ウイングセッティングの確認です。

https://twitter.com/AlbertFabreg

ラスベガスは典型的なストップ&ゴーサーキットであり、非常に長いロングストレートを有しているため、トップスピードが非常に重要視されています。

今回はコンストラクターズタイトルを争うトップ3のセッティングを中心に、話を進めていきたいと思います。

まず最初にフェラーリ、マクラーレン、レッドブル、アストンマーティンのセッティングを見ていきましょう。

結論からお話しすると、ラスベガスでの優勝候補の最有力はフェラーリと見ています。

フェラーリは現在コンストラクターズタイトルを、マクラーレンとレッドブルと争っている訳ですが、このトップ3の中でもストレートスピードが飛びぬけて速いです。

ロングストレートを有しているこのコースではフェラーリはかなり有利に働くはずです。

但し、タイヤを適切な作動温度領域に早く持っていくことが勝利へのカギになってくるはずです。

今シーズンのフェラーリSF-24はタイヤに対して易しい分、熱入れが苦手といういわゆる”冷え性”と呼ばれる症状が出ています。

昨年初開催だったラスベガスの気温は1桁台とレースを行う環境としては非常に低温で路面温度も低いです。

昨年のフェラーリのマシン特性はSF-24とは真逆でタイヤに厳しいマシンでしたので、低温な路面に対してもタイヤを作動温度に早く持っていくことができ、ルクレールが見事にポールを獲得。

しかし決勝ではタイヤに対する攻撃性が高いマシン特性が災いし、2位でレースを終える羽目になってしまいました。

今年のフェラーリの場合、ダウンフォースを極限までに削り、舵角を増やすことでタイヤへの攻撃性を高め作動温度に早く持っていくことができるはずです。

フェラーリのこのウイングセッティングは現時点では正しいと言えるでしょう。

チャンピオンシップでかなり優位な状況に立つフェルスタッペン有するレッドブル。

一刻も早くチャンピオン獲得を決めて安心したいところ。

しかし予算の都合上ストレート専用のウイングを作らなかったことがここで懸念材料になってきています。

写真のウイングはベルギーでも使われたアッパーフラップの中央部を削ったものです。

専用ウイングを持たないレッドブルは、現状最もロードラッグなウイングで対抗してきました。

それでも専用ウイングを持つ他のチームに比べストレートの伸びは悪く。この区間では苦戦するはずです。

このような状況になってくると、レッドブルは上記の写真の様に現状最もロードラッグ仕様のウイングを持ち込みストレートでの差を少しでも埋める。

もしくは、コーナー寄りにウイングセッティングを振ってコーナリングでアドバンテージを取るかという2択になってしまいます。

続いて現在コンストラクターズランキングトップのマクラーレン。

トップ3の中でも最もストレートの伸びが悪いです。

その中でもマクラーレンは、ミニDRSを導入したリアウイング(事実上禁止された)を持ち込んだり、ロワフラップを削ったリアウイングを持ち込んだりと、工夫を凝らしてきます。

ストレートの伸びが悪い分は、このマシンの武器でもあるコーナリングやブレーキングスタビリティでカバーします。

ここ数戦すっかり元気がないアストンマーティンですがトップスピードは高いです。

次にアルピーヌ、ウィリアムズ、ハース、ザウバーの4チームです。

アルピーヌは前回のブラジルで大量得点獲得。

特にアメリカラウンドに突入してからのガスリーの活躍が目立ちます。

フロントが入ってくれるマシンなのでリアダウンフォースを多少削ってもバランスはとれるはずです。

続いてウィリアムズです。

本来であればこういったコースで武器であるストレートスピードが発揮されるのですが・・・

マクラーレンのポッドウイングを真似たことにより武器であるストレートスピードは消滅。

引き換えにコーナリングパフォーマンスは向上しましたが、セッティングを間違うと曲がってくれない(アメリカGP)というスイートスポットの狭いマシンになってしまいました。

リアウイングのフラップは限界まで削って対応してきましたが、どうなるだろうか?

因みにブラジルでのスプリント予選でのトップスピードはハースに次ぐ速さでした。

前回散々だったハース。

ウィリアムズ同様マクラーレンに似せたマシンですが、上述通りブラジルでのスプリント予選ではストレートスピードがトップでした。

ザウバーはリアウイング翼端の処理が未だに遅れているのが気になります。

最下位が常だった今シーズンですが、徐々に改善が見られています。

最後にウイングの部分が小さいですがRBのセッティングです。

こちらも当然のようにドラッグを限界まで削ったセッティングです。

低速域でのメカニカルグリップが高いRBのマシンは、このコースにおいてコーナリングでアドバンテージを作ることはできそうですが、ドラッグ過多なマシンによってストレートでそのアドバンテージが失われる予感がします。

そしてアメリカラウンドを見ていて特に感じたのが、タイヤの持ちが明らか悪くなったという点も気になります。

ドラッグを削ったリアウイングにより、ストレートはマシになりそうですが、決勝においてのタイヤの持ちが気になります。

今回RBはレッドブルRB20のリア周りを投入しているそうですが、これがこのセッティングとどうマッチするのか?

パフォーマンス向上よりも来期に向けたテストという意味合いが強いようなので、過度な期待はできないでしょう。

低温の中で如何にタイヤを早く機能させるかが焦点

ラスベガスで使用されるコースは典型的な市街地コースです。

ナイトレースでの開催となっており、初開催だった昨年は気温と路面温度ともに低く、グリップが効かず苦労する場面が幾度か見られました。

先ほどウイングセッティングを確認していきましたが、セッティングはストレートに全振りしたセッティングにした方が得策と考えます。

その理由として、殆どのコーナーが低速コーナーであり、ダウンフォースの必要性が無いから。

もう一つは低速コーナー故にタイヤに掛かるストレスが少ない分熱入れに苦労するからです。

ダウンフォース寄りのセッティングというのは、コーナリングを速くする意味合いももちろんありますが、ダウンフォースを効かせることによってより少ない舵角で鋭く曲がってくれます。

そうすることでタイヤに掛かる負荷を少なくしている訳です。

しかし、今回のような路面温度が低く低速コーナーばかりのコースでダウンフォースを付け過ぎてしまうと、タイヤに熱が入らずタイヤの性能を引き出すことができなくなります。

なのでダウンフォースは極力削り、タイヤへの攻撃性を高めてやることで、より早くタイヤを適正温度に持っていくことが重要になってきます。

フェルスタッペンVSノリスここで決着か?

2週間前のサンパウロGPでフェルスタッペンが優勝し、ノリスとのポイント差は61ポイントにまで広がりました。

ノリスはラスベガスGP終了時点でポイント差を59点差以内に縮めなければ、その時点でフェルスタッペンのチャンピオンが決まってしまいます。

カタールとアブダビの2戦で最大で獲得できるポイント数は60。

(カタールでのスプリント優勝(8ポイント)、カタールとアブダビでの決勝レース優勝+ファステストラップ獲得(26×2=52ポイント))。

例えノリスがラスベガスでフェルスタッペンとのポイント差を60とした場合、残り2レースで最大のポイント数60ポイントを獲得かつ、フェルスタッペンがノーポイントで終わり同点になったとしてもフェルスタッペンがチャンピオンになります。

その理由として以下の条件が挙げられます。

7) デッドヒート(同着)
7.1 同着になった競技参加者のポジションすべてに与えられる賞とポイントは、加算したうえ平等に分けられ
る。
7.2 複数のコンストラクターまたはドライバーが同一ポイントで選手権を終了した場合(そのどちらかの場合
においても)、選手権の上位者は下記の方法により決定される。
a)決勝レースで1位の回数が一番多いもの。
b)1位の回数が同じ場合は、決勝レースで2位の回数が一番多いもの。
c)2位の回数も同数の場合は、決勝レースで3位の回数が一番多いもの、などのように勝者が決まるま
で続ける。
d)以上の方法によっても結果が出ない場合には、FIAが適切と思われる基準に従って勝者を決定する

2024 FIA FORMULA ONE WORLD CHAMPIONSHIP 競 技 規 則 より引用

つまり上記の条件では同点でもフェルスタッペンの方が優勝回数が多い為、フェルスタッペンがチャンピオンになるということです。

つまりノリスのタイトル獲得の条件は非常に厳しくなってしまった。

逆にフェルスタッペンは、このラスベガスGPでノリスより1つでも上の順位を獲ることができれば、その時点でチャンピオンが決まるということです。

マクラーレンはストレートの伸びの悪さを、リアウイングの工夫によって何とか改善しようとしていますが、アメリカでのフロントの空力セット変更によってマシンバランスを取るのが難しくなってしまったように思えます。

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