マイナー自動車メーカー特集。元F1デザイナーが立ち上げたスーパーカーメーカーとは?

市販車分析

F1はサマーブレイクということで、自動車メーカー特集をお送りしております。

前回の投稿では元F1コンストラクターが作るスーパーカーということで、ブラバムを紹介しました。

今回はそんなブラバムのF1マシンのデザインを手がけたデザイナーが立ち上げたブランドを紹介します。

先ず、F1ファンであれば恐らく聞いたことがあるであろう、”ゴードン・マレー”という名前を聞いたことがあるでしょうか?

存じ上げない方もいらっしゃるかと思うので、今回はゴードン・マレーが作り上げた実績も含めて紹介したいと思います。

ゴードン・マレーの実績

前述の通りゴードン・マレーはF1マシンのデザイナーです。

南アフリカ出身、製図工として働く傍ら大学の定時制で工学を学びます。

ロードバイクのレーサーだった父同様に、マレ―自身もマシンを自作しレースに参加していました。

1969年にイギリスに渡りその際運よくブラバムに採用され、デザイナーとしてのキャリアがスタートします。

マレーは17年間ブラバムに在籍し、通算22勝というブラバムの勝利数の半数以上をマレーがデザインしたマシンで記録しました。

当時マレーが作るマシンの代表作はBT46B、BT49、BT52等。

BT46Bは前回のブラバムの市販車の投稿でも触れたファンカーです。

リアに付いたファンでフロア下の空気を勢いよく吸い込むことで、車体上部とフロアとの圧力差を強力にするグランドエフェクトカーを利用した奇抜なマシンは言うまでもなく有名です。

BT49はグランドエフェクトカー全盛期の頃、地上最低高を60mmとするレギュレーションに対応するために生まれた、ハイドロ・ニューマチック・サスペンション。

この装置はシリンダー内に空気を充填し、マシンが停止している時は規定通り最低高が60mm以上ある状態ですが、ダウンフォースが掛かる高速域では、オイルがリザーバー側に移動することでサスペンションが縮みよりダウンフォースを得やすい姿勢になるといったものです。

この際最低高は60mm以下になるという明らかにレギュレーション違反ですが、走行中のマシンの車高は測ることはできないということで黙認されました。

BT52は重量配分をリアに寄せてマシンバランスを取り、ダウンフォースは前後のウイングに頼り、サイドポッドはドラッグを極限までに抑える為小さくした”アロー・シェイプ”(ロー・ライン・コンセプトとも)と呼ばれる手法を取りました。

更にレース中の給油を想定し、他のチームよりも燃料タンクを小さくし、軽めのマシンで他のチームよりもアドバンテージを得ようともしました。

奇抜なマシンデザインとルールの抜け穴を巧く突いてきたマレー。

しかし80年代、マクラーレンによって初めて使用されたカーボン・ファイバーに対する考え方は疑問的な考えを持つ方でした。

当時はブレーキシステムにはカーボンディスクを使用していたものの、シャシーには軽量であるが剛性の有無を不安視していたため、他のチームよりも、カーボンファイバー製シャシーの導入は遅かったです。

なので当時はアルミハニカム製のシャシーにカーボンファイバーを張り付けるまでに留めていたそうです。

当時チームオーナーだったバーニー・エクレストンとの関係は良好でしたが、マレーは市販車のデザインを手掛けてみたいと思うようになります。

元々マレーにオファーを出していたマクラーレンに、将来的に市販車をデザインするという約束で、1986年終了後にマクラーレンに移籍。

マクラーレンにはデザイナーの第一人者であるジョン・バーナードがいましたが、そのバーナードと入れ替わる形での入団となりました。

マクラーレンでは、MP4/4、MP4/5をデザインし、3年連続のドライバーチャンピオンとコンストラクターチャンピオンを達成し1990年を最後にF1マシンのデザイナーを引退。

その後は1991年から2004年までマクラーレンの市販車部門のデザイナーとして活動。

自信が初めて手掛けたマクラーレンF1はル・マンで優勝。

2004年にはメルセデス・ベンツと共同プロジェクトとしてSLRマクラーレンを開発。

2007年にはゴードン・マレー・デザインという自らのデザインスタジオを設立、様々な自動車メーカーと契約し市販車のデザインを手掛けてきました。

2017年にゴードン・マレー・オートモーティブ(GMA)という自らのブランドを立ち上げ、2019年に今回紹介するT.50の発売を発表しました。

GMA T.50とは?

2019年に生産が発表されたT.50はGMAブランドとして初めて開発された車になります。

マレーにとってそれまで懐疑的だったカーボンファイバーをシャシーからボディパネルの至る所に使い、徹底した軽量化を図りました。

マレー曰く、「これまでで最も純粋な、ドライバーを中心としたスーパーカー」を謳っており、そのマシンの外見はマクラーレンF1でシートも同じく3座式、リアにはBT46Bを彷彿とさせるファンカー構造となっています。

50という数字は、マレーが自動車業界に身を置いて丁度50周年であるということ、そしてこの車のデザインが50台目のデザインであることから名付けられました。

エンジンはコスワースと共同開発した3.9LV8NAエンジンを搭載。

最高出力は663PS/11,500rpm、最大トルクは47.6kgf・m/9,000rpmで最高回転数は12,100rpmというかなり高回転型のエンジンです。

エンジンブロックはアルミニウム製。コネクティングロッドやバルブにチタンを使用したことでエンジンも軽量化、その重量はV12エンジン史上最軽量の178kgを達成。

これに加えてISG「Integrated Starter Generator」という48Vのハイブリッドシステムによって最大3分間のアディショナルパワーを得ることができます。

トランスミッションは6速MTで、こちらも軽量化が図られています。

その結果、車両重量は986kgと1t未満に抑えることに成功しました。

外観には前述の通りBT46Bを彷彿させるファンが何といっても特徴的です。

このファンの直径は400mm、最大回転数7,000rpmです。

このファンに加えリアには2つの可動式リアスポイラーがついており、走行中にフロア下を通る空気の加速を助け、ダウンフォース増とドラッグの抑制を行います。

このリアスポイラーは走行状態に応じて6種類のモードがあり、最大50%のダウンフォース増、ドラッグは最大12.5%低減されます。

窓ガラスは一般のものより薄くされ、ここにも軽量化が図られています。

内装も前述のマクラーレンF1と同様の造りをしており3座式。

中央にコックピット(運転席)、そのやや後ろにもう2つの座席があります。

そしてこの座席もカーボンを使ったバケットシートなので軽量化はここでも図られています。

最高のロードカーを作ることを目標としていただけに、これだけの軽量化が図られているのにも関わらず、カーオーディオやエアコンは内蔵されているという普段使いされることもしっかりと考えた造りになっています。

値段は日本円で3億2735万円。しかし発表から48時間以内に完売となりました。

因みにT.50にはサーキット仕様があり、T.50sニキ・ラウダというバージョンがあります。

2019年に死去したニキ・ラウダの誕生日を記念して限定25台が生産されました。

こちらはサーキット仕様なので、先ほどのカーオーディオやエアコンなどの快適仕様を撤去し徹底的な軽量化を図ったことで、ロードカー仕様より100kgも軽い852kgというとんでもない車両重量を達成。

T.50sには各部にエアロパーツが付き、最大で1500kgのダウンフォースを発生させることもできます。

エンジンは同じものが搭載されていますが、ロードカー仕様よりも最大出力が50PS高い710PSを発生。

エアインテークのラム圧によって高速走行時には最大出力は735PSまで上昇します。

ロードカー仕様と比べてディフューザーの造りが明らかに違うことが分かります。

フロアトンネルの差別化をきっちりとし、捲れも強烈になっている。

フロアダウンフォースはより強力なものとなるでしょう。

こちらは1台4億6000万円。ロードカー仕様の生産終了後に製作されるとのことです。

GMAの今後

GMAは2023年に2台目のモデル、T.33というモデルが発売される予定です。

こちらはフェラーリ・ディーノやランボルギーニ・ミウラからインスピレーションを受けた外観となるようです。

こちらはT.50の3シーターとは違い、完全な2シーターのクーペとなるようです。

しかしエンジンは相変わらずコスワース製の3.9LV12エンジンを搭載する予定で、この車も徹底的な軽量化が図られる予定でボディーは完全にカーボンファイバー製となります。

但しT.50とは違いリアはファンカー構造ではありません。

T.50と同様に100台の限定生産という予定になっているようです。

今回は元F1デザイナーが指揮を執るゴードン・マレー・オートモーティブ(GMA)が作るスーパーカーについて紹介してみました。

私も世界中のスーパーカーについて調べていると、元F1関係者が自動車メーカーとして存続しているというケースが良くあることに気付きました。

紐解いていくと、経営者はブラバムの様にドライバーだった選手の息子や親族が、この名前を何とか残したいと働きかけているという事例が多いみたいです。

実際に作られている車を調べてみると、F1に関わっていただけあってF1の技術を市販車にフィードバックされている車も多く見かけます。

ゴードン・マレー・オートモーティブはスーパーカーの少量生産というスタイルを取っていますが、今後もどんな車を生み出してくれるのか非常に楽しみなメーカーでもあります。

ということで今回はマイナーな自動車メーカーが作るスーパーカーの第3弾ということでゴードン・マレー・オートモーティブを紹介しました。

次回もお楽しみに。

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