今回もマイナーな自動車メーカー特集第段です。
今回は元F1コンストラクターが製造、販売を手掛ける自動車メーカーです。
前回はデンマークのゼンヴォというメーカーの車を紹介しました。
マイナーなメーカーの為中々日の目を受けづらいですが、その存在を知って調べてみると凄い技術の宝庫です。
自らの視野の狭さを恨むほどにです。
折角のF1の夏休みなので、もっと世界中にある色々な自動車メーカーや色々な技術に目を向けてみませんか?
ブラバムとは?
ブラバムとは1962年、その当時まだ現役のF1ドライバーでありチャンピオン経験者のジャック・ブラバムによって設立されました。
1966年、チームオーナー兼ドライバーのブラバムは1959年と1960年以来、3度目のF1チャンピオンとなり史上唯一のチームオーナー兼任のドライバーチャンピオンが誕生しました。
1967年には、チームメイトのデニス・ハルムがチャンピオンに。
ジャック・ブラバムは1970年に現役引退。チームスタッフにチームを任せ、自身は身を引きます。
その後1972年当時実業家だったバーニー・エクレストンがチームを買収し新体制が始まります。
1978年にはファンカーで知られるBT46Bを使用し優勝も、1戦で使用禁止されるなど、チャンピオンからは遠ざかっていたものの当時からインパクトのあるチームとして知られていました。
因みにエクレストンはBT46Bを何としてでもレースで使用したかったが為に(当時違反ではないかという声があった)弁護士にまで相談しています。
この努力が実り使用するところまでこぎつけたものの、後方のドライバーから速すぎる上にファンから砂利や砂が飛んできて危ないといった苦情が相次ぎ結局1戦のみの使用で終わってしまったのです。
1981年にネルソン・ピケによりブラバムのマシンが再びチャンピオンに返り咲きました。
1983年に再び戴冠もその後は低迷。
1988年に一年の活動休止を経て、1992年資金難に陥りハンガリーGPを最後にチームは消滅。
60年代前半から80年代前半にかけてインパクトのある活躍を見せてくれたチームでした。
市販車事業に乗り出した経緯とは?
ブラバムのチーム消滅から約20年後の2013年。
創始者ジャック・ブラバムの3男であるデビッド・ブラバムが、ブラバムの名前を世に残したいという思いから動きます。
ブラバムの名称を使用する権利を獲得し、プロジェクト・ブラバム”という復活プログラムを立ち上げます。
再びレースの世界に戻るため、WECへの参戦を計画するも結局実現には至らず。
しかしその後はブラバム・レーシングというレーシングチームとして活動を続け、ブラバム・グループにまで発展していきます。
2022年には市販車事業に乗り出す等、様々な事業を行う企業にまで成長しています。
ブラバムのシンボルマークは、ヒッシング・シドという頭がライオン、胴体がコブラ、尾がサソリという架空の怪物を模したものになります。
これは1981年のシーズンオフにオーナーのエクレストンと当時を代表するデザイナーの一人であったゴードン・マレー等により、インパクトのあるシンボルマークを作ろうということで作られたオリジナルのロゴマークです。
現在市販車に使用されているロゴマークは違うものになっているようです。
やはり作る車はトンデモなかった!?
そしてデビッド・ブラバムはブラバム創立70周年を迎えた2018年に、ブラバム・オートモーティブをジャック・ブラバムの母国オーストラリアで設立しました。
その年にサーキット走行専用車のBT62を創立70周年に因み、70台限定で販売しました。
うち35台はブラバムがF1で通算35勝を挙げたことから、35勝分(35色)の専用カラーで仕上げられるセレブレーションシリーズ
もう35台はオーナーによるオーダーで仕上げられるシグネチャーシリーズとカラーリングの仕様が分けられました。
エンジンスペックは5.4リッターV8自然吸気エンジンをミッドシップに搭載。
最大700馬力を発揮し6速のシーケンシャルギアボックスをパドルシフトで操作します。
エンジンスペックに関してはよくあるスーパーカーレベルですが、ブラバムの本当に凄いところはシャシーです。
サーキット専用車としてボディにはカーボンファイバーがふんだんに使われ、軽量化と高剛性を実現。
フロントスプリッターにアンダーパネル、リアはディフューザーと大型のリアウイングによってダウンフォースの合計はなんと1200kgという市販車ベースの車としてはとんでもない量のダウンフォースを発生します。
これらのエアロパーツは全てカーボンファイバー製、オプションで追加することができます。
更に内装はFIA公認のカーボンファイバー製シートに、6点式のハーネスシートベルト、アルカンターラトリム、カーボンファイバー製ダッシュボード、そしてF1仕込みの取り外し可能なステアリングホイール、車内はロールバーが張り巡らされサーキット専用走行車として徹底的な軽量化が図られています。
その重量は何と972kgという驚くレベルの軽量化を実現。
前述の通りこれで合計のダウンフォース量は車体重量を超える1200kgですから尚驚きです。
足回りも勿論フロントリア共にダブルウィッシュボーン式。
プッシュロッド式で4ウェイアジャスタブルダンパー(オーリンズ製)とアジャスタブルアンチロールバーを備え付けよりレーシーに仕上げられています。
デビッド・ブラバムはWECでの優勝を目指すための第一弾としてBT62を開発、販売しました。
しかし、オーナー等から公道でも使用したいという声が相次いだことから、公道走行ができるようにオプションが設定されています。
この公道仕様はBT62Rと呼ばれます。
その内容は普段使いしやすいようにステアリングの切れ角を上げる、エアコンの設置、ドアロックや盗難防止機能を付け防犯性能も備えるといったものです。
更にロゴとバッジには18金が使用されているという、スーパーカー特有の高級感も演出してくれます。
値段は日本円にして約1億3000万円、前述の公道走行を可能とするオプションは約2000万円を支払えばやってくれるとのことです。
BT62は2020年に英国耐久選手権に参戦。
2021年にはBT62をGT2規定に対応するため、エンジンをデチューンしたBT63の登場。
排気量は5.4リッターから5.2リッターに、最高出力は700馬力から600馬力に減少。
BT63をGT2ヨーロピアン・シリーズに参戦させました。
BT63もBT62同様に70台の限定生産する予定でしたが、2024年に会社は解散してしまいました。
しかし、創始者ジャック・ブラバムの思いを何とか残したいというデビッド・ブラバムの行動は確かに爪痕を残せたのではないかと思います。
今回はかつてF1コンストラクターであったブラバムが作るスーパーカーを紹介しました。
次回はブラバムつながりで、ファンカーを作った調本人が作るスーパーカーを紹介しようと思います。
今回も読んで頂きありがとうございました。
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