こんにちは
以前からお話している通りF1マシンが発生しているダウンフォースの量はとてつもなく多いですが、同時にドラッグも比例して増えていると説明しました。
最高速域でのダウンフォース量は、車重の3~4倍であるということも説明しました。
話は変わりますが、今の現代社会では、移動の際には必ずと言っていいほど車を使用する車社会です。
日常の足として使用する方もいれば、スポーツ走行やサーキットでの全開走行を楽しまれる方もいます。
市販車はF1マシンに比べてダウンフォースは遥かに少ないですが、受ける空気抵抗も遥かに少ないです。
なんで自分の車はこんなにも燃費が悪いんだろう?
馬力のあるスポーツカーに乗っているのに何故か最高速が伸びない。
という方、恐らく大勢いらっしゃるかと思います。
どちらもエンジンパワーや排気量という観点に目が行きがちですが、一概にそれだけが原因とは言い切れません。
先ほどからお話ししているように、空気抵抗が関係しておりそれは車体の形状によって違ってきます。
ダウンフォース同様に空気抵抗にも数値が設定されています。
今回はF1マシンだけではなく市販車の観点から空力を分析し、どの様な形状の空気抵抗の数値が優秀なのかを一緒に考えてみましょう。
CD値とは?
タイトルの通り空気抵抗はCD値と言われる指標があり数値化されています。
CD値はCoefficient Drag の略称であり周りの流体によって受ける抵抗の度合いを表します。
CD値の数値が小さいほど、空気抵抗は小さく逆に大きいほど空気抵抗が大きいということになります。
市販車で見るCD値
CD値についてさっと説明させて頂きましたがどんな車、どんな形状がどのくらいのCD値を出しているのかという説明をこれからさせて頂きます。
CD値が低い条件として挙げられる形状は
- ボディが流線形であること
- 前面投影面積が小さいこと
の2点が挙げられます。
流線形のボディ形状がなぜ良いとされるのかというと
ボディに空気がぶつかった時に空気を滑らかに流してくれるからです。
滑らかに空気をぶつけることで空気の乱れが少なく車のボディに沿って綺麗に空気が流れてくれます。
逆に旧車に多く見られるような四角いボディ形状は
ボディに空気がぶつかった時に空気が直線的な流れをします。
直線的にぶつかった空気は剥離を起こしボディに沿って空気が流れてくれません。
それだけでなく、空気の動きが激しく動くので、空気抵抗もそれだけ大きくなります。
ボディ形状の違いだけでもこれだけ空気抵抗に違いが出てくるので、流線形のボディの方がエンジンパワーが少なくて済むうえ、当然燃費も良くなります。
次に全面投影面積について説明しますがこれもあまり聞き慣れない言葉ですよね。
簡単に説明すると、車を正面から見た時に、どれだけ面積があるかということです。
更に分かりやすく例えると、スポーツカーとトラックを正面から見た時、どちらの方が面積が大きいですか?と聞かれたら間違いなくトラックと答えるはずです。
ここでCD値の例を挙げさせていただくと、スポーツカーのCD値は0.3~0.4
セダンの場合は0.4~0.5
トラックやワンボックス等は0.5以上
といったところです。
CD値が0.25辺りの数値なら市販車として最高レベルとされています。
が、近年ではCD値が0.25を下回る車両がどんどん出てきています。
最近の傾向を見ているとメルセデスが優秀なCD値をたたき出した車を多く販売しているように思えます。
やはり空力が最も重要なF1に参戦し続けたことで、市販車にもきっちりフィードバックしてくるあたり流石と言ったところでしょうか。
F1マシンのCD値
ここまでは、市販車を例に説明してきましたが、肝心のF1マシンのCD値はどのくらいなのでしょうか?
意外にも 1.0前後 とかなり高い数値をたたき出しています。
前述の説明からすると、全面投影面積は市販車なんかよりも全然狭いはずなのに何故か?
実は過去の投稿にヒント(ほぼ正解)が出ています。
そうです。
タイヤが剥き出し
だからなんです。
原因としては、タイヤと空気抵抗がもろに正面衝突しているからなんです。
画像を見て頂ければ分かるかと思いますが、タイヤが水しぶきを切りながら走行していますが、これだけ大量の空気がタイヤにぶつかっている訳です。
タイヤの剥き出しがすべて悪いわけではなく、市販車には付いていないフロントウイングもCD値の悪化に一役買ってしまっています。
ですが逆を言うと、これだけ空気抵抗があるからこそダウンフォースの量も多くあれだけのコーナリング性能を実現できているとも言えます。
空気抵抗を減らす手段
では、空気抵抗を減らす手段はないのか?と言われると、実は存在します。
タイヤを物理的に覆ってしまえばいいのです。
市販車はF1マシンと違いタイヤがボディに覆われているので当然空気抵抗はその分小さいです。
とは言えボディの隙間から空気抵抗をどうしても受けてしまっているので、全く受けないという構造は不可能だと思います。
ではここで、実際にタイヤが物理的に覆われた車両の例を紹介しましょう。
1980年代に存在していたグループCというカテゴリーの車両でジャガーXJR9という車両が良い例です。
主に耐久レースを走る車両として使用され、世界3大レースで知られるル・マン24時間耐久レースで優勝を飾った車両です。
空気抵抗を極力少なくするために、リアタイヤが完全にボディで覆われています。
これは完全に私の憶測になりますが、ル・マンで使用されるサルト・サーキットは非常に長いストレート区間があり、そこで最高速の向上と低燃費化を実現するために施されたのではないかと思います。
コースを見てみると、一部高速コーナーはありますが基本的に低速コーナーが多く、その直後は長いストレート区間といういわゆるストップ・アンド・ゴー・サーキットのようなレイアウトです。
基本的にストップ・アンド・ゴー・サーキットのようなコースレイアウトでは、ダウンフォースを付けない方がよいので、このような構造に踏み切ったのではないかと思います。
車を選ぶときにはCD値も参考にしよう
冒頭でもお話したようにCD値が低ければ低いほど、燃費が優秀で、少ないエンジンパワーで済むと説明しました。
車に興味が有る無しに関わらず、車を選ぶ際には燃費であったり・定員人数・どのくらい荷物が積めるかは必ず気になると思います。
この投稿を読んで頂いた方、その際にはCD値というワードを思い出してください。
今回F1からは少し話が逸れましたが、この先車を購入、買い替えようとお考えの方は是非このCD値という数値も参考にしながら選んで頂ければいいと思います。
全く関係ない話ですが今回の投稿で市販車の説明をする際に私自身が所有するミニカーを使って説明をさせて頂きました。(笑)
一応コレクション兼研究材料として扱っています。
今後も市販車やミニカーを使って空力の説明をする投稿を考えていますので悪しからず。(笑)
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