第7戦エミリア・ロマーニャGP。持ち込まれたパーツ、セッティングの確認と予選決勝の展望

マシンアップデート分析

約2ヶ月にも及ぶ開幕のフライアウェイ戦が終了し、いよいよ今週からヨーロッパラウンドが開幕します。

ここ6戦見てきましたが、やはり出だしはレッドブルが好調。

しかし昨年ほどの圧倒さはなく、アップデートの効果次第で、マクラーレンやフェラーリなど他のトップチーム勢にも十分チャンスはありそうな感じはしました。

今年のヨーロッパラウンド開幕戦は、イタリア、エミーリア・ロマーニャ州にあるイモラサーキット。

私の個人的な意見としては、ヨーロッパラウンドの開幕戦といえばスペインのカタルーニャから始まるイメージがあります。

そもそも第二の開幕戦と言われるのは何故なのか?

長年F1ファンをやっている方にはもうお分かりかと思いますが、ヨーロッパラウンドの開始に合わせて大抵のチームが今シーズン初めての大型アップデートを入れてくるからです。

開幕してから暫くフライアウェイが続いていたので、マイナーアップデートをちょこちょこと入れて繋いできたチームが殆どのはず。

しかし、ここで大規模アップデートが入ることで勢力図はシャッフルされる可能性がある。

といってもどこのチームもアップデートしてくると思うので、その分差も縮まらないかも知れませんが・・・。

今回はフェラーリとアストンマーティンに面白いアップデートが入りました。

どんなアップデートが入ったのか見ていきましょう。

各チームのウイングセッティング

引用元 https://twitter.com/AlbertFabrega

それではここからはいつものようにウイングセッティングをチェックしていきたいと思います。

今回のイモラはサーキットの特性で言うとストップ&ゴーサーキット。

しかしセクター1のバリアンテ・タンブレロとバリアンテ・ヴィルヌーブはシケインとは思えないほどの高速コーナーなので、ダウンフォースが必要になってきます。

セクター2のアクエ・ミネラリを抜けてからは低速コーナーが連続し最終コーナーのリヴァッツァまで続きます。

ストップ&ゴーサーキットの特徴としてはコーナーを抜けるとロングストレートが続くサーキットが多いですが、イモラの場合ロングストレートと呼べる区間はホームストレートくらいしかありません。

しかもそんなに長いわけではないので、それならばコーナリングに振った方が良いのではないかと思います。

トップ4のウイングセッティングを見てみると、フラップが立っているのでやはりハイダウンフォース仕様のセッティングとみてよさそうです。

フェラーリは翼端板ベーンに切り欠きを入れるアップデートを施してきました。

余分なドラッグをそぎ落としアウトウォッシュもより強くなっているはずです。

フェラーリはこのイモラでのホームレースに向けてかなり大規模なアップデートを取り入れてきたので後述で触れていきたいと思います。

引用元 https://twitter.com/AlbertFabrega

マクラーレンのウイングが2回写ってしまっていますがトップ4以降のチーム。

アルピーヌはかなりフラップを立てているのが分かります。

ストレートスピードでは敵わないと判断してのセッティングだと思います。

今までは他のチームと比べて薄めのウイングを持ち込んできていたウィリアムズも今回は流石に立ち気味のフラップにセッティングしたウイングを持ち込んでいます。

アルピーヌとは逆でストレートは伸びるが、コーナリングが遅くもたつく。

ウイングを立てた時にどんな変化が現れるのでしょうか?

反対にフラップが若干寝せ気味になっているメルセデス。

今シーズンもリアの不安定さに苦しめられているメルセデス。

このフラップ角が意味するものとは一体何なのか・・・

フィオラノでテストしたフェラーリに大きな変化

前回のマイアミから1週間空いての今回のレース。

フェラーリはこの1週間を使って、フィオラノで雨避けのスプレーガードと大規模アップデートを入れたマシンの走行映像がリークされていました。

噂にはありましたが、やはりレッドブルのソリューションを入れたアップデートの様です。

引用元 https://twitter.com/AlbertFabrega

アンダーバイト式のサイドポッドを止め、RB20と同じ”ゼロインテーク”仕様のサイドポッドを入れてきました。

Chrono GPというチャンネルでフィオラノをテスト走行をしたフェラーリについて分析をしていましたが、アンダーバイトとオーバーバイトとではリアに流れる気流の乱れがこんなに違うのか、と愕然とするレベルです。

簡単に言葉で説明するとインテークに入らなかった気流が跳ね上げられ、真っすぐに流れる気流と先ず衝突する。

その直後にサイドミラーと空気がぶつかり合いそこで空気がかなり乱れてしまう。

そのため、リアセクションには汚い気流が流れていってしまうという感じです。

変更はそれだけではなく

https://www.youtube.com/watch?v=p6YY3y78BKs

Sダクトの出口形状を変更してきました。

ハロ後部に設置されていたSダクトの出口はアップデートされたマシンにはどこにも見当たらず、代わりにアウトウォッシュを促進させるボルテックスジェネレーターのみが設けられるという全体的にスッキリした形になりました。

この部分に関してはレッドブルRB20とは違ったアプローチを取った形になっています。

ではハロ後部にあったSダクトの出口は何処に移動したのか・・・

https://www.youtube.com/watch?v=p6YY3y78BKs

この写真を見る限り、恐らくエンジンカウル辺りに移動していると考えられます。

俗にいうルーバーの役割をしている辺りでしょうか?

マイアミの時点では膨らんでいたエンジンカウルを絞った分開口部を広めに取っている。

エンジンの排気ガスを排出するルーバーにしては開口部が広すぎる。

だとするとハロ後部にあったSダクトの出口をここに持ってきたのではないかと考えられるのです。

以前の出口ではリアセクションに向けて流したい空気の量を確保できなかったのでしょう。

しかもあのSダクトの出口では短すぎて流したいところに気流が辿り着かないのではないのかと・・・

開口部をリアセクションとの距離が近い場所に設けることによって、空気の量を確保し、流したい場所に確実に流そうとしている。

確実に流す工夫の一つとして前述の通りエンジンカウルを絞り凹みを設けた。

凹みを付けた部分は空気の流れる面積が狭く圧力が低い。

周りを流れる空気は高圧で低圧部である凹みの部分を押すように流れるので、空気が剥離することなく流したい場所に確実に空気を流せる。

そしてハロ付近に新しく設けられたボルテックスジェネレーター(アウトウォッシュ促進用)はSダクト出口から出てきた空気の流れを邪魔しないように設けられたものと考えています。

こうしてみるとレッドブルとは似たようで違ったコンセプトをとりながらも、実によく考えられたマシンアップデートだと思います。

何はともあれ・・・フェラーリは地元で勝つために気合十分といったところでしょう。

アストンマーティンの面白アップデート

フェラーリのアップデートも十分に目を見張る内容のものでしたが、アストンマーティンのアップデートも、数は少ないとはいえ中々興味深いものを示してくれています。

アストンマーティンが行ってきたアップデートはフロントウイングが中心(現時点ではフロントウイングのみ)であることが確認できました。

引用元 https://twitter.com/AlbertFabrega

先ずノーズ先端部分から確認していくと、先端の路面に最も近い部分の面積を削ってきていることが分かるかと思います。

イモラはストップ&ゴーサーキットの割に高速コーナーと呼べる区間がそこそこ多い。そうなるとフロントの入りが重要になってくるはずなのですがこの変更の意図とは何か?

ウイング下の低圧部分の面積が多い方がフロントの入りは良くなるはずなのですが・・・

先端の変更はそれだけではなく、ドライバーを冷却するためのダクトが設けられました。

メインフラップ(最下段)と二枚目のフラップの接続にも変更が見受けられます。

1枚目のフラップと2枚目のフラップの間に僅かに隙間ができました。

ノーズ下に流す空気と跳ね上げる空気とで分けたいのでしょう。

2・3枚目と3・4枚目のフラップ接続には変わらずセパレーターが設けられています。

引用元 https://twitter.com/AlbertFabrega

これがアストンマーティンの今回のアップデートで最も注目すべき点。

3・4枚目のフラップ中心辺りにV字型の凹みが設けられました。

何だこれは!?と一瞬思いつつも私なりに2つの仮説を立ててみました。

  • V字の凹みを設けることでタイヤに気流をぶつけないようにしている。つまり凹みの外側はタイヤより外側に空気を流そうとしている。内側は従来通りサスペンションを通じてサイドポッドに向かって流そうとしている。
  • V字の凹みの底の部分に低圧を発生させてタイヤに空気が当たる量を少なくしている。つまり低圧であるということは空気の量(密度)が少なく流れが速い。タイヤの正面部分にV字の凹みを設けその場所を低圧にすることでフロントタイヤに当たる空気の量を少なくし、リアセクションに流れてしまう気流の乱れを抑えることを目的にしている

という赤青の文字で二つの仮説を立ててみました。

要約すると、赤字の仮説はタイヤ正面の気流を内外に切り分ける説。

青字の仮説は、タイヤ正面の気流を少なくし乱流を防ごうとする説。特にこれについては、市販車においても採用されているボルテックスジェネレーターを設ける発想に似ています。

敢えて小さな損失を発生させることで、大きな損失を防ごうとする考えです。

これについては、以前下記の投稿で触れているので、是非参考にして頂ければと思います。

速度域による抗力の違い – アルボンノート (albonnote.com)

という合っているのか分からない仮説を一瞬で立ててみましたが、皆さんの意見は如何でしょうか?

もしかしたらこれが正解ではないのか?と思う答えをお持ちの方いらっしゃいましたら是非お問い合わせの方に連絡お願いします。

引用元 https://twitter.com/AlbertFabrega

他に確認できたところといえば、翼端板の間隔が広めになりました。

引用元 https://twitter.com/AlbertFabrega

更に翼端板の後部を見ると、後ろが伸び、湾曲していたものを直線的に変えてきました。

効果は間違いなく”アウトウォッシュ”

そのアウトウォッシュの量を増やしたいのか、後部を延長させたことでアウトウォッシュを発生させる位置を変えたいのか?

簡単に言うとアウトウォッシュの強化に繋がりますが、どちらにせよ翼端板の面積が増えるということは、それだけドラッグも増えるということを承知しておくべきです。

アップデートの効果が示すもの

今回はヨーロッパラウンド開幕戦ということで、フェラーリとアストンマーティンのアップデートに触れていきました。

他にも複雑化されたフロアエッジを入れてきたチームなど、第二の開幕戦だけあって大規模なアップデートを投入しています。

フロアエッジはこのレギュレーションにおいては特に重要で気になる部分ですが、複雑なだけあって難しい部分ですので、分析でき次第また投稿しようかと思います。

アップデートを入れたからと言って必ずしも成功するわけではありません。

特にこの2チームはアップデートが弱いと以前から言われ続け、後半戦になるにつれて息切れし、他のチームに置いて行かれるパターンが多いです。

フェラーリはかなり大規模なアップデートを行いましたが、果たしてこれでレッドブルに近づくことができるのか?それともまだ埋まらない差が存在しているのか?

その答えはこの週末に出るはずです。

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