ザウバー(ステーク)F1チーム 2024年新車C44。課題は一貫性

マシン分析

新車発表は早くも3チーム目

2月5日にウィリアムズとザウバー(ステーク)が同日発表という形になりました

2004年のベルギーと2005年のカナダでマッサがフェラーリ製のエンジンを積んで当時チーム最高位の4位入賞を2回記録したというのも印象的です。

BMWと手を組んだ2008年にはロバート・クビサがカナダでチーム唯一の優勝を記録

更には2012年の鈴鹿では小林可夢偉が日本人史上3人目の3位表彰台獲得など・・・

印象深いレースが多い、最早F1において欠かせないチームの一つだと思っています。

そんな歴史を作ってきたチームが、今年はどんなマシンを見せてくれるのか?

新車発表されたマシンと昨年のマシンを比較していきましょう。

よく言えば柔軟、悪く言えば中途半端だったマシン

C43のサイドポッド

先ずサイドポッドですが、ウィリアムズ同様に小型のものを採用しています。

デザインもウィリアムズに似たシンプルなデザインにし、サイドポッド上部は平坦で、ダウンウォッシュも全体的に緩やかです。

しかし、アンダーカットはC42同様シーズン通して広いままで、ボディ横とフロア上部の気流をコアンダ効果を使ってディフューザーまで綺麗に流すことを狙っています。

実は昨年ストレートのトップスピードで363km/hを記録していますが、これは2023年のシーズントップの記録でした。

ダウンフォースの多いマシンではあったものの、ストレートでは遅い部類に入る方なので不思議です。

しかし、アンダーカットの面積はシーズンを通して広いままで、ボディ横とフロア上部の気流を”コアンダ効果”を使いディフューザーまできれいに流そうとしています。

フロアパネルはシーズン中に大規模なアップデートを二度行っており、11戦目イギリス以降はキール部にウイングレットを取り付け、フロア前半でダウンフォースを生み出す策を取りました。

フロントサスペンションは、アッパーアームを最上部に取り付け、ステアリングロッドとアームカバーを新設計し、空力とアンチダイブの両立を狙いました。

リアサスペンションは2022年同様にプッシュロッドを継続しました。ギアボックスを自社設計ににしたことでフロアデザインに影響するケーシングを大幅に変更。

リアウイングについてはシーズン通してステー2本を継続

モナコのようなダウンフォースが必要なコースでは、大型のものを持ち込み

モンツァやアゼルバイジャンのようなロングストレートがあるコースでは、シンプルなデザインに。

しかしDRSを作動させるフラップ上部の面積が大きく、シーズンを通してリアのダウンフォース不足に悩まされていたことが伺えます。

C43はリアのスタビリティ不足にも悩まされビームウイングはサーキット特性によって大きく変更しています。

ビームウイングの上下間に隙間を取っている。

これはサイドポッドからディフューザーに向けて流れる気流をロワウイングで上に跳ね上げてダウンフォースを稼ぎたいという意図の表れでしょう。

やはりこのチームも塗装は全体的にカーボン(無塗装)を基調としており、軽量化に努めています。

C44

蛍光色のグリーンとカーボン地を中心としたカラーリングはネットで、フロービズと揶揄されていましたが、プルロッドになったフロントサスペンションを見て

あ・・・レッドブルを真似た、というのが第一印象です。

全体的に見てレッドブルRB19のコンセプトに寄せてきました。

レッドブルのコンセプトをいかに上手く真似るかが、今年のマシン発表の観点だと自分は考えていましたが、やはり出てきたかという感じです。

先ずフロントウイングから見ていくと、昨年の最終戦アブダビで使用されていたものと似た形をしています。

C44のフロントサスペンション

フロントサスペンションをプルロッドにしたことで、フロントウイングから跳ね上げられた気流を抑えるという点においては、プッシュロッドより適しているといえるでしょう。

昨年同様アッパーアームの前部の取付位置を最上部にし、アンチダイブを実現しています。

サイドポッド形状にもレッドブルの技術を応用している部分が確認でき、

RB19のようなダウンウォッシュ型に変更してきました。

インレット下部の張り出しもレッドブル同様になりました。

昨年C43ではサイドポッド上部は平坦な作りになっていましたが、C44では他のチームの例にもれなくサイドポッド上部をスライダー形状にしています。

サイドポッド周辺の気流を安定させながらダウンウォッシュを強くするにはやはりこの形が一番ということでしょうか。

C44のサイドポッド周辺

アンダーカットの抉り込みがかなり深いです。

ここまで深い抉り込みは、かつてアルファロメオC42とアストンマーチンAMR22(何れも2022年)が取り入れていたダブルフロアに近い気がします。

ダブルフロアはサイドポッド下のアンダーカットの面積を狭め負圧を作り出すことで、フロアダウンフォースと同じようにダウンフォースを発生させようする作りのことを言います。

現在のマシンにおけるアンダーカットはフロアエッジと特に密接な関係にあるので、アンダーカットを通る気流をいかにしてフロアエッジの気流と組み合わせるかが重要になってきます。

AMR22のサイドポッド周辺の作り。アンダーカットの抉れがかなり深い。

ロールバーは昨年のような特徴的なものとは打って変わって、その周りにインダクションポッドを形成する形に変わりました。

今年の目標は”一貫性”

ここから2年はザウバーとして活動していきますが

2026年を持ってザウバーは”アウディ”としての活動が始まります。

その準備の一環として2022年シーズンからギアボックスの自社設計を始めました。

それまでのフェラーリから自社製への変更はリアサスペンションを自由に設計できることを意味しています。

しかし、問題はマシンコンセプト全体を一新したことにあったのです。

コーナリングが良い時にはドラッグが強すぎてストレートで置いていかれ

逆にストレートが速い時は、それ以外のコーナーで全く話にならない

という一貫性の無いマシンになってしまいました。

時には、期待できないレースで突如良いパフォーマンスを発揮したり

しかし、前述のように2023年のトップスピードが最も速かったマシンでもあるので

何とも言えないところです。

ですが、コンストラクターズランキング9位という位置がこのチームの現状を物語っているでしょう。

結局、何度も投入した大規模なアップデートもマシンに与えた影響はそれほど大きくなかったということです。

特に前述のビームウイングのアップデートは上手くいっておらず、一貫性という部分に少なからず影響を与えてしまっていたでしょう。

自社設計を始めたギアボックスの製造も3年目。

アウディに移り変わる前に、何かインパクトを残して欲しいところです。

ただ、個人的にはレッドブルとマクラーレンしか採用していないプルロッドを採用してきたあたり、このチームの本気度が感じられます。

新車も昨年同様”リア”(の気流流れ・スタビリティ)が課題になってくるとは思いますが

私が思うには恐らくこのマシン、速いのではないでしょうか?

その実現のためには、やはり一貫性のあるパフォーマンスを続けることでしょう。

新車発表はこちらも参照

ウィリアムズの2024年型マシンFW46。今年も直線番長は継続? – アルボンノート (albonnote.com)

アルピーヌ2024年型マシンA524。信頼性向上で上位進出を狙う – アルボンノート (albonnote.com)

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