アルピーヌ2024年型マシンA524。信頼性向上で上位進出を狙う

マシン分析

新車発表もそろそろ折り返しにかかろうというところ

4チーム目はアルピーヌがA524を発表しました。

昨年は新しいドライバーにピエール・ガスリーを迎え

オールフレンチ体制で臨みましたが、結果は決して良いといえるものではありませんでした。

昨年の新車発表同様に、じらしてきましたが、その一台は待った甲斐があるといえるものでした。

見た感じ昨年に比べて違う箇所が多くかなり手が加えられている。

早速昨年のマシンと比べていきましょう。

評価が難しかったA523

アルピーヌはA523の開発を軽量化という部分に焦点を置きました。

軽量化すれば、どのようなサーキット特性でも競争力を発揮できると考えたからです。

しかし、軽量化を重視しすぎた故に、マシンパフォーマンスは一貫性に欠けるどころか、信頼性も低いマシンになってしまいました。

それでもモナコやザントフォールトのようなハイダウンフォースの低速コースでは、レースコンディションで競争力を示し、表彰台を獲得しています。

A523のフロント周り

A522と比べて大きく変わったのがノーズデザインです。

他チーム同様、最下段フラップがノーズから独立した形状から、フラップ4枚全てが接続した形になりました。

ノーズ本体も、横幅が広く上面は平たい形になりました。

シーズン開幕仕様のフラップは、平坦でしたが、シーズンが進んでいくにつれ最上段のフラップ形状が複雑化。4枚ともものコック中央部に向けて気流を集中させるデザインを意図しています。

フロントサスペンション、リアサスペンション共にプッシュロッドを採用しています。

フロントサスペンションのアッパーアームとロワアームを前から見ると平行に配置されている。

アルピーヌの場合は、両アームとも上部に配置。

このような構造にすることで、フロアに向けて気流を流そうとしている。

アームが上部に配置されていることで、アンチダイブ性能も期待できます。

リアサスペンションもプッシュロッドを採用。

自社製ギアボックスの強みである、設計の自由度を生かしアーム類を高く配置しフロアに流れる気流の改善を狙った。

サイドポッドを新デザインにしたのでそれに沿ったレイアウトにしました。

マシンを正面から見た時に、サイドポッドインレットもかなり小さいのが分かります。

A523を上空から見た図。サイドポッドのスライダー形状が後部に行くにつれ内側に絞られている。

サイドポッド上部はアストンマーチンAMR23に似たスライダー形状を設けていました。

しかし、アルピーヌのスライダー形状は、サイドポッドの湾曲に沿い、マシン後部に行くにつれて内側に絞られていく独自製法です。

こうすることでディフューザーまで流す気流を確保していました。

7戦目モナコのアップデートでは、サイドポッド自体の横幅を広げ、更にスライダー形状の抉れ面積も拡大。ダウンウォッシュによるダウンフォース増と、リアセクションに流す気流の量を増加することに成功。結果表彰台を獲得することになります。

リアウイングは、新エアロコンセプトに伴い複雑化されたものを採用。

開幕戦バーレーンに持ち込まれたものは、中央部が大きく凹んだベースフラップのものを使用し注目されました。

アッパーフラップ翼端板ベーンの形状もサーキット特性によってデザインを変更。

9戦目カナダでの決勝終盤では、リアウイングがぐらついていたにも関わらず完走。

チーム側はこれを想定内と流し、物議を醸しました。

A523のリア周り

ビームウイングもコースによってさまざまなチャレンジをし

サウジアラビア、モンツァのようなハイスピードコースでは、ウィリアムズ同様、アッパーウイングを支えるという目的のみに使用し、中央部を極端に立てたロワウイングでリアダウンフォースのバランスを取っていました。

低速のシンガポールでも同様の形を取りましたが、ロワウイングによるダウンフォース発生量の増加を期待するような形状に。

モナコでは、上下ともに大型のものを使用しました。

A524

まずマシンを見ての感想は、昨年に比べてカーボン地が増えています。去年よりも塗装による軽量化を図ってきたという感じです。

ただ、昨年も軽量化重視で考えていたのであれば、何故去年からこのようなカーボン地を増やしたカラーリングにしなかったのかが不思議です。

マシンの方に目を向けると昨年と大きく形を変え大改革をしてきたといえるでしょう。

ところどころにレッドブルのコンセプトも見えています。

A524のノーズ(上)とA523のノーズ(下)

フロントノーズは昨年以上に太くなり中央部が最も低い。

左右のフロントウイングが少し持ち上げられる形状になりました。

ノーズは最小断面積が決められているので、ノーズ下の空間を確保するならば、幅広にした方が良いということです。

その分前面投影面積は増え、トップスピードは劣りますがノーズ下のダウンフォース量は増えます。

A524はコーナリング特化のマシンになりそうです。

フロントサスペンションは昨年同様プッシュロッドを採用してきましたが、昨年までは平坦だったアッパーアームは、前部がノーズ最上部に取り付けられ、後部よりも高くしてきました。

レッドブルRB19と同じようなデザインにしたことで、アンチダイブ機能を昨年よりも強化してきました。

A524(上)とA523(下)を見下ろした画像

サイドポッド上部のスライダー形状に大きな変化はありませんが、インテークをレッドブルのような張り出しを設けてきました。

インテークは横にさらに広がり、それに伴ってサイドポッドアンダーカットの抉りは深くなりました。

フロアエッジの形状は昨年よりもかなり複雑化。

フロアから空気を排出する量を増やし、強力なインウォッシュを使ってシーリングを強化する狙いでしょう。

上記のアンダーカットの抉りから流れてくる気流も生かすことでシーリングをより強力にしようとしています。

A524(上)にはSF-23のようなSダクト(赤線)が取り入れられている。

そしてA524には面白い機構が取り入れられています。

なんと、昨年フェラーリSF-23が採用していたSダクトが取り入れられています。

アルピーヌとフェラーリの場合のSダクトに関する考え方は恐らく違いますが。

サイドポッド上面の気流を加速させ、更にスライダー形状に気流を確実に導く。

アルピーヌの狙いはそこにあると思っています。

リアサスペンションのレイアウトも変更。

A523ではアッパーアームの間にプッシュロッドが通されていました。

A524ではアッパーアームのV字角がかなり狭められ、その前にプッシュロッドが搭載されました。

サスペンションの内部機構が前の方に移動した可能性があります。

ハンデはあるものの

アルピーヌはルノー製のパワーユニットを搭載する唯一のチーム。

自社開発によってシャシーに合わせた専用設計ができるというアドバンテージはあるが実走によって得られるデータがどうしても少ないというハンデを背負わされています。

昨年は最も非力なPUと評されたことで、ロビー活動をしたものの努力は実らず。

それでも時には、他のPUサプライヤーとあまり変わらないパフォーマンスを示したりと不思議なPUではありました。

今年は年間使用機数制限の強化による信頼性向上の名目での改良にかけているはずです。

昨年最も評価の難しかったA523,今季型A524はどんなパフォーマンスを見せてくれるのか?

ガスリーとオコンは不仲説も取り沙汰されていますが、2年目を迎える今年

一体どうなるのか。

目を離せるチームが1チームたりともありません。

新車発表はこちらも参照

ザウバー(ステーク)F1チーム 2024年新車C44。課題は一貫性 – アルボンノート (albonnote.com)

ビザキャッシュアップ 2024年マシンVCARB 01。レッドブルの設計哲学を生かせるか。 – アルボンノート (albonnote.com)

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