アストンマーチン2024年型マシンAMR24。手腕が問われるファローズの二年目

マシン分析

新車発表もいよいよ後半戦に入ってきました。

今回はアストンマーチンです。

昨年は開幕戦から序盤戦にかけて常に上位争いを繰り広げてくれました。

しかし、後半戦になるにつれてその勢いは徐々に無くなり、入賞がやっとという状況でした。

そんな中でもアロンソがブラジルで3位表彰台を獲得するなど、ドライバーズランキングで4位を獲得。

チームにとってもアロンソ自身にとっても飛躍的な一年になりました。

とはいえ、徐々に勢いがなくなった現状は変わりません。

序盤は何がよくて、後半戦の失速の原因は何だったのか。という点に触れながら新車も見ていきましょう。

序盤は良かったが・・・

昨年はレッドブルから移籍してきた、テクニカルディレクターのダン・ファローズによって開発されたAMR23はレッドブルを模倣した構造を持っていました。

フロントサスペンションはプッシュロッドを使っていましたが、ここでファローズの手により、アッパーアーム前部がモノコックの上端に取り付けられました。

アンチダイブの機能確保、姿勢変化を極力抑える意図が感じられます。

それだけに留まらず、ファローズによってサイドポッドに特徴的な機構が設けられ、RB18とは差別化が図られました。

AMRをフロントから見た図。正面から見てもサイドポッド上部の抉れが確認できる。

他のマシンでも見かけられた、サイドポッドスライダーです。

RB18に近かったAMR22のサイドポッド形状(上)、スライダーが設けられた、AMR23のサイドポッド形状(下)

サイドポッドスライダーを設けることでドラッグの軽減、サイドポッド周りの気流改善

サイドポッド上部に空気を流しダウンウォッシュを作り、それによってダウンフォースを増やそうという考えでした。

結果的にこの機構は前半戦にかけて良く機能していました。

フェラーリの2022年型マシンF1-75からインスピレーションを受けたと考えられ、スライダー形状はアストンマーチンが最初に設けました。

フロントウイングはベースフラップがノーズから独立しているデザインも使っていた2022年から、昨年は4枚のフラップ共にノーズに接続するような形になりました。

フラップ形状は内側が低くなっており、ノーズ下のセンターラインに気流を取り込む量を増やすデザインに改められました。

前半戦のフロントウイングは大きくたわみ

高速域では後方に向けて寝た形になり、低速域ではフラップが立ち上がる様子がカメラに捉えられていました。

いわゆる、フレキシブルフロントウイングです。

シーズンに半ばに、フレキシブルフロントウイングは規制を目的とする技術指令書がFIAから出されると前半戦の勢いが嘘のように無くなり、入賞が精いっぱいという苦戦が続くことになりました。

それだけではなく、前半戦あれだけ機能していたサイドポッドスライダーも、結局面積が大きかったことでドラッグになってしまいストレートが伸びないという弱点を露呈してしまいました。

サイドポッドスライダーのアップデート
AMR23のアンダーカット形状(上、開幕仕様)(下、カナダでのアップデートされた仕様)

それでも、カナダでは、サイドポッドスライダーをアップデート

抉りの開始地点を若干後方にずらし、アンダーカットの面積も拡大。

スライダーの開始点が後方にずれたことでドラッグは低減。

結局このレースでアロンソは3位表彰台を獲得しました。

AMR23のリアウイングのスウェッジライン

リアウイングの空力処理にも拘りを見せてきた昨年。

サイドポッドの抉れに対しても連動するように翼端板側面に、気流を上に跳ね上げるスウェッジラインを導入。

この機構もアストンマーチンに続いて多くのチームに導入されました。

オランダGPで導入されてたミニウイング

なお、AMR23はザントフォールトのような、低速コースでは少しでもダウンフォースを稼ごうと、リアエンドにミニウイングが取り付けられていました。

結局ピットストップ練習の際に壊してしまいましたが、こうした少しでもダウンフォースを稼ごうという涙ぐましい努力が昨年の順位に反映されていると思います。

このマシンの特徴としては、中低速域が速く、ストレートでは競争力があまりありませんでした。

前述の通り、開幕戦で使われていたフレキシブルフロントウイングは規制が掛けられ、それまでの勢いに水を差された形にはなりましたが

元々のダウンフォース量は高かったため、低速コースではそのパフォーマンスが落ちることはありませんでした。

その証拠にオランダで、アロンソは2位表彰台に乗っています。

とはいえ、特に後半戦では、コース特性によって立ち位置の上下動が激しかったことは否定できません。

AMR24

AMR24の正面画像、サイドポッドインレットが異様に狭いことが確認できる。

先ずこのマシンを目にして驚きました。

サイドポッドインレットが異様に薄いです

昨年のRB19のサイドポッドインレットにも驚かされましたが、AMR24はこれよりももっと薄い。

恐らくラジエータ等の冷却器類の配置を変えてきたのでしょう。

ファローズはニューウェイに対して対抗意識でもあるのでしょうか(笑)

しかしこれによってサイドポッドアンダーカットの始まりはどこよりも早い

フロントから流れてきた空気を確実にアンダーカットに追いやり、アンダーカット下部で負圧を生み出し、フロアエッジと気流を連動させてシーリングを強める。

前面投影面積の小さくなったインテークは、ドラッグ軽減にも貢献してくれるでしょう。

フロントウイングのフラップはノーズから独立した形に。

更にAMR23と比べてノーズが短くなりました。

ノーズ下のダウンフォースを増やすという狙いがあるのでしょう。

エッジウイング等RB19にそっくりです。

アストンマーチンは、フロア設計に影響が出るギアボックスは、メルセデスから供給。

設計の自由度が無いため、1から10までレッドブルを模倣するのは難しいはずです。

もちろんPUもメルセデス製のものなので、PUのサイズも考えてボディを作らなくてはいけないので、どうしてもボディラインに関しては妥協せざるを得ません。

カスタマーチーム故の弱点とも言えるでしょう。

リアサスペンションは引き続きメルセデスから供給、しかし昨年はプルロッドだったのに対し今年はプッシュロッドを採用しています。

プッシュロッド化によりマシン下のスペースを確保し、設計の自由度を少しでも稼いだという感じです。

結論、このマシンは昨年課題だった低ドラッグ化を実現、RB19との差別化を図った上でサイドポッドを利用して作るダウンフォースを強め、弱点を打ち消し、”あらゆるコース特性に対応できるマシン”にしたと見ています。

テストで上手く機能すると良いんですが・・・

真価が問われるファローズ

2023年は、昨年までニューウェイと一緒に仕事をしていたので、内部構造を知っていたファローズはAMR23にその技術を使ったことで成功した。

しかし、今年からはニューウェイとの接点がゼロなので、完全に自分の手でマシンをデザインしなけれななりません。

AMR24はファローズの進化が問われる一台になることは間違いないです。

昨年はアロンソはよかったものの、ストロールは怪我などで踏んだり蹴ったりのシーズンでした。

今年はストロールにとっても今後のキャリアにおいても重要な一年になるのではないかと思います。

ローレンス・ストロールという後ろ盾はいるものの、昨年のような成績では、スポンサーたちが黙っていないはず。

AMR24はどんなパフォーマンスを見せてくれるでしょうか?

新車発表はこちらも参照

ビザキャッシュアップ 2024年マシンVCARB 01。レッドブルの設計哲学を生かせるか。 – アルボンノート (albonnote.com)

スクーデリア・フェラーリ2024年マシンSF-24。コンセプト一新で狙う王座奪還 – アルボンノート (albonnote.com)

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