先日のイタリアGPではルクレールが見事、ノリスのアンダーカットを跳ね返し逆転優勝を決めました。
ダウンフォースを限界に削ったセッティングはコーナーでマクラーンやメルセデスを始めとする他のトップチームに劣っていたものの、その分ストレートスピードで取り返した。
しかしレッドブルとフェラーリは、マクラーレンとメルセデスが使用しているフレキシブルウイングに対して抗議をしました。
ここ近年のシーズンでよく耳にするフレキシブルウイングとは何なのか?
フレキシブルの優位性とは?
フレキシブルウイングは速度に応じてウイングのフラップがたわむウイングの事を指します。
フレキシブルウイングは主に空力的に大きな利点をもたらします。
低速域ではフラップ角が付いているので、気流を跳ね上げコーナリングにおいて有利です。
逆に高速域では強力な気流の力によってフラップが寝るので、ドラッグの削減を促します。
しかし耐久性や剛性については多くから疑問の目を持たれ、しばしば審議の対象ともなります。
空力はフロントから、フロントの気流の流し方でマシンの挙動は大きく変わるので、いかに大事な部分かということが良く分かるかと思います。
しかしフロントウイングで注目されているのはフラップ角度の変化だけではありません。
フラップとフラップの間の隙間、スロットギャップの方です。
マクラーレンとレッドブルのウイングで比較をしてみましょう。
マクラーレンのフロントウイングはスロットギャップが大きく、その隙間からノーズ下に多くの気流を送り込もうとしています。
フロント内側の青矢印のスロットギャップセパレーターの接続部が後述するレッドブルと大きく違います。
マクラーレンの場合セパレーターの外側が高速時に寝るような形になります。
ノーズ下に取り込まれた気流はフロアを通り、グランドエフェクトによるダウンフォースをより強力にしてくれます。
ダウンフォースが強くなる分車高は変化します。
この車高変化に対応するためにマクラーレンのサスセッティングは柔らかめになっています。
ダウンフォースはしっかり稼ぎつつも増加による車高変化にも柔軟に対応。
柔らかいサスペンションはコーナリングによる横Gを吸収してくれる。
かつてのレッドブルのようなサスセッティングです。
対してレッドブルはスロットギャップは狭く、フロントウイングの役割は主に気流の跳ね上げがメインとなっています。
そして先ほどマクラーレンのフロントウイングで見ていただいたセパレーターの接続部の形が違います(青矢印)。
あくまでセパレーターとしての役割を持っている形です。
そしてマクラーレンのフロントウイングと比べてフラップ間の隙間、スロットギャップが狭いです。
本来フロア前方で多くの空気を使う構造の筈なのに、スロットギャップを広げて気流をノーズ下に取り込もうとしない。
昨年のレッドブルはサスセッティングは柔らかく、姿勢変化に対して非常に柔軟なマシンでした。
しかし、ニューウェイがいなくなった後RB20を扱えるスタッフはおらず、ピーキーな挙動が強く残ったマシンになってしまいました。
この原因は気流の変化に対して過敏すぎるフロア構造な訳ですが、それを抑えるものとしてサスセッティングを固くせざるを得ない状況に追い込まれてしまいました。
固くすることによってフロアの気流の量の変化は無くなりましたが、硬くなった分、横Gに対してタイヤが厳しいマシンになってしまいました。
この流れは昨年のフェラーリSF-23と同様の流れと言えます。
なのでレッドブルは前回のイタリアで他のチームよりもダウンフォース多めでコーナーの速さに振ったセッティングでしたが、硬いサスによって早くにタイヤを壊してしまう運びとなってしまいました。
スロットギャップを大きくし過ぎてしまうと、今度はフロアに取り込む気流の量が多すぎてしまい、ポポーパシングを引き起こす直接的な原因にも繋がります。
レッドブルのフロアは空力に敏感過ぎるので、マクラーレンの真似をしないのではなく、できないのです。
トップ4のウイングの動きの比較
これはイタリアGPでのトップ4のウイングの動きをウイングの後ろから見た視点です。
レッドブルとフェラーリは速度域が違っても全くウイングフラップに変化は無し。
対してメルセデスとマクラーレンは、速度域に応じてフラップの角度が変化していることが分かるかと思います。
スロットギャップセパレーターの接続部を分割してこの機構を実現させています。
そしてこの写真から分かることはスロットギャップの大きさです。
レッドブルはかなり狭め、フェラーリはレッドブルに比べると若干広いか?
そしてメルセデスとマクラーレンの一番大きい違いは、このスロットギャップ。
この写真を見る限りではメルセデスのスロットギャップは確認できません。
対してマクラーレンは他のトップチームよりもスロットギャップが大きいことが分かるかと思います。
レッドブル、メルセデス、フェラーリの3チームはあくまで、マシン上部とフロアを流れる気流の速度差(圧力差)を作ることでダウンフォースを発生させている。
対してマクラーレンはスロットギャップに空気を流し、フロアにより多くの気流を取り込むことでグランドエフェクトによるダウンフォースを増加している。
マクラーレンはストレートスピードが弱点なので、フロントウイングを通じてドラッグの削減に努めようとした考えではないかと思います。
トップスピードはまだトップに及びませんが、改善が見られます。
昨年に引き続きマクラーレンはすごい勢いでマシンパフォーマンスを上げてきています。
このウイングが合法か違法かを判断されるのは先ですが、現時点では完全にトップチームのパフォーマンスです。
レッドブルを抜くのも時間の問題でしょう。
他のアップデート分析は以下からリンク。
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