ニューウェイがレッドブルで最後の仕事、RB17が遂に公開。置き土産の性能をあの車種と比較

市販車分析

シーズン序盤、レッドブルの内輪揉めに嫌気が指したニューウェイ。

彼は序盤戦でチームを離脱することを発表、その後はチームの活動にも参加せずパドック内をウロウロ。

そんなニューウェイを他チームが放っておくはずがなく、色々なチームが彼にオファーを出している。

結論はまだですが、フェラーリとアストンの一騎打ちを予感させます。

つい先日にはパドックでノート片手に何か書いている姿が目撃されました。

そんなニューウェイがチームを離れて行っていたのは、レッドブルが手掛けるハイパーカー、RB17の開発でした。

そのRB17のビジュアルが今週開催のグッドウッド・フェスティバル2024で遂に公開、ニューウェイにとって恐らく最後の仕事になるであろう。

彼が手掛けたRB17は一体どんな姿なのか?

マシンスペック確認

先ずは簡単にマシンスペックの確認です。

エンジンはコスワース製の4.5リッター、最高回転数は15,000rpmのV10自然吸気エンジン、車重は約875kg

ギアボックスはF1同様カーボンファイバー製の後輪駆動。

約200馬力のモーターも搭載され、最高出力は約1200ps、最高速は350km/hを超えるとされています。

ニューウェイはエンジン音にも拘っており、本来V8エンジンを積むところをV10エンジンに変更したそう。

ニューウェイ曰く、F1で最高のエンジンサウンドはV10エンジンとのことです。

シャシーにはF1で培った技術をまんべんなく投入し、F1マシンとも同等のタイムも期待できるとされています。

しかもそれでいて、F1マシンよりも運用が簡単にできるとされていて、WECのマシン規定もクリアしているという究極の一台です。

しかしこれはサーキット専用車としての開発だったので、恐らく一般道でお目にかかることはまずないでしょう?

値段は日本円で12億という破格の金額です。

今回のRB17はニューウェイがF1で培った空力技術を存分に投入しつつ所有するオーナー、見る人をも楽しませる。

そんな芸術作品を彼は造りたかったのではないでしょうか?

”似て非なる”アストンマーティン・ヴァルキリーとの比較

そんな形で公開されたRB17ですが、この車に実に似ている車が存在します。

それは、”アストンマーティン・ヴァルキリー・AMR・PRO”です。

レッドブルがアストンマーティンとの共同プロジェクトの一環として当車両が開発されました。

こちらもニューウェイが設計を手掛けています。

ニューウェイ曰く、プロドライバーがこのマシンに乗れば、F1マシンと同等のタイムが記録できるとのこと。

2021年に販売開始、約3年前のことになります。

ではRB17はこのマシンのアップデート版と考えても良いのか?

実際に比べてみましょう。

ヴァルキリーのパワートレインはコスワース製6.5リッター、最高回転数は11,000rpmのV12気筒エンジンです。

F1に搭載されていたKERSに似たようなハイブリッドシステムも取り入れられ、162ps280Nmのアディショナルパワーを加えると、最大で1176ps、最大トルクは900nmを発生します。

シャシーはこちらもカーボンファイバーがふんだんに使われ、車重は1000kgに抑えることに成功です。

グランツーリスモシリーズで登場した架空のレーシングカー、レッドブル2010xの応用を利かせています。

フロントグリルには大きく開き、本来市販車ならついているであろう、バンパーは排除し、代わりにF1仕込みのフロントウイングが装着される格好となりました。

前輪後方にはターニングベーン(垂直に取り付けられた、気流を外側に逃がすパーツ)が取り付けられています。

リアタイヤ手前に見えるスリットは現行マシンにもあるフロアエッジにそっくりな構造です。

こうしてみるとヴァルキリーは旧レギュレーション中に作られたマシンにもかかわらず、現行F1マシンのようなアウトウォッシュを積極的に取り入れたマシンのように見える。

ニューウェイの先見の明は流石と言ったところか。

それでは今回発表されたRB17との比較です。

フロントグリルの開口部は大きく開けた形状。

こうすることでフロアに向けて流れる空気量を確保します。

フロントウイングはどちらもF1マシンのような湾曲は見られず比較的シンプルな造りとなっています。

一応両車両ともあくまで”市販車ベース”で造られている車ですので、風の影響などを受けにくい造りにしているのでしょう。

市販車ベースの基本は弱アンダー傾向、一般のユーザーにも向けて販売されるので、こうして安全性の確保を狙っていると考えられています。

RB17のシンプルなフロントウイングはフロアに向けて流す空気をできる限り乱したくないのだろうとも考えられます。

RB17は翼端板が付き、アウトウォッシュを発生させて車体側面の気流を乱さない。

しかしアストンマーティン・ヴァルキリーには翼端板が付いていません。

続いてはRB17とF1マシンのギアボックスの比較です。

ギアボックスはF1のレギュレーションとは一切関係が無く、現行のF1マシンと違ってフロアの面積を増やしてダウンフォースを稼ごうとする手法も必要としない車ですので、長いシャフトを必要としません。

デフの位置だって縮小されています。

今のF1マシンはただでさえ全長が長いと言われている。

何故原因が分かっているのにやろうとしないんですかね・・・

続いてリアセクションの比較。

比較対象が分かりづらく申し訳ありませんが分析をします。

ディフューザーの比較ですが、アストンマーティン・ヴァルキリーの場合、クラッシャブルストラクチャーの手前まで、センターラインがはっきりと分けられています。

左右それぞれ独立したフロアトンネルを通ってディフューザーに向けて流れてくる造り。

リアウイングは二本のステーが設けられ比較的高い位置に、翼端板はリアタイヤの外側まで伸びています。

一方RB17のディフューザの造りはヴァルキリーに比べるとかなり丸みを帯びた造りになっています。

ヴァルキリーは角ばったクラッシャブルストラクチャーがディフューザー面積を圧迫し邪魔になっていましたが、RB17では丸くなり、ディフューザー面積を損なっていません。

フロアのセンターラインはかなり手前で終わり、ディフューザーに向けての捲れがリアタイヤ手前くらいから始まっています。

ディフューザー手前に設けられているスリットも気になるところです。

リアウイングの本体自体は翼端板をリアタイヤの真後ろに取り付けられていますが、フラップの湾曲は中央が若干盛り上がった程度でほぼ真っすぐ水平に。

更にヴァルキリーでは取り付けられていたステーは無く、ウイングの位置もかなり低くなっています。

リアウイングの低さはフロアによるグランドエフェクトでのダウンフォース発生を意識したもの、つまりフロントとリアでのバランスを意識したものだと考えられます。

ヴァルキリーはリアセクションは全てボディで覆われ、リアウイングの手前にはスリットが設けられています。

RB17のリアセクションは完全に覆われてはおらず、リアサスペンションが剥き出しになっています。

フロントタイヤの後方は両車ともに剥き出しになった形状。

しかし、ターニングベーンを設けたヴァルキリーと違い、RB17はダクトが設けられている。

仕切りは外側を向いているのでアウトウォッシュとして車体外に排出するものと考えて良いでしょう。

RB17の車体側面はF1マシンのようなサイドポッド形状になっており、アンダーカットを通じてダウンウォッシュを作り出す形になっている。

更にリアタイヤ前方にスリットが設けられていたヴァルキリーと違い、RB17はリアタイヤ前方に巨大なフィンを設けより強力なアウトウォッシュを発生させてリアタイヤ付近の気流を乱しません。

ヴァルキリーの場合、ディフューザーが左右に完全に仕切られた形なので、コーナリング時に左右でダウンフォースの差が顕著に表れます。

しかしRB17はディフューザー面積をかなり広く取った形、現行マシンによるグランドエフェクトを盛り込んでいるので、コーナリングによる左右のダウンフォース差は表れにくくなっています。

このディフューザー、フロアトンネル、リアウイングについては当時のF1のレギュレーションの違いが反映されていると考えられるので、似ているようで中身はかなり違った造りになったのではないでしょうか?

因みにアストンマーティン・ヴァルキリーAMR・PROは2025年デイトナ24時間耐久レースでレースデビュー予定です、どんなパフォーマンスを見せてくれるでしょうか?

ニューウェイ、レッドブルでの20年の集大成

このマシンの完成がニューウェイがレッドブルでの最後の仕事となります。

完成された車体は、今年の夏ごろにテストされます。

2025年の前半を以てニューウェイはレッドブルを去ります。

ニューウェイはレッドブルと20年近くもの付き合いでした。

ニューウェイがマクラーレンを去ったのが2005年。

その後2006年にレッドブルに移籍、移籍後すぐには成果は出ませんでしたが、彼はチームからマシンに関する裁量権を与えられていたため、レッドブルのマシン製作スタッフはニューウェイの手によってかき集められました。

その結果、2008年のイタリアGPで当時トロロッソ所属のセバスチャン・ベッテルが本家レッドブルのマシンよりも先に優勝します。

この優勝を皮切りにレッドブルのマシンはどんどんと頭角を表します。

そして2010年にはベッテルがワールドチャンピオン、2013年まではレッドブルの一強状態。

その後メルセデスの台頭によりチャンピオンからは遠ざかりましが、2021年フェルスタッペンにより再び戴冠。

そして現在に至ります。

2006年~2023年までに、ドライバーズチャンピオン7回(2010~2013・2021~2023)

コンストラクターズチャンピオン6回(2010~2013・2022~2023)

という素晴らしい実績を作ってきました。

創設当初は中団に埋もれていたチームが、ニューウェイの加入によって一気にトップチームまで駆け上がっていきました。

ニューウェイがいなければレッドブルはここまでの功績を残せなかったはずです。

しかし、そんなニューウェイもかなり高齢となり、デザイナーとしてのキャリアも終わりに近づいています。

そんな中でもニューウェイは引く手数多、次の移籍先が最後になるのか、それともキャリアはまだ続いていくのか、ニューウェイは新しい場所でどんな成績を残すのか目が離せません。

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